第2話 ヒロインが恋愛相談してきました
超越者とは、あらゆる才能があり、あらゆるスキルを取得することができる。らしい。
らしいってのは、当たり前だが努力しなきゃなんにもならないってことだ。
そういえばドライは体を鍛えたりする環境に無いよな、こんなところに押し込められているし。
だがやらない選択肢はない。死にたくはないし努力でもなんでもやって生き残ってやる。
幸い軟禁されているとはいえ、部屋からもこの屋敷からも出られる。禁止されているのは城への入場だけだ。
なら、行動あるのみ。だよな。
地下室を出ようとして扉を閉めた。なんかノックするポーズの女の子がいたから思わず反射的に。
『どうして扉を閉めたのですか? ドライ、聞いていますか? 扉を開けて下さいまし』
ピンクの髪の毛だったぞ? 誰だ? なんで胸がドキドキしてるの!? てかドライに会いに来る女の子っていたのか?
映画内のドライの設定だと婚約者も決まっていなかったよな。ピンクの髪の毛……もしかしてドライの好きな子? でもピンクブロンドだろ? どこかで……ヒロイン?
『ド ラ イ あ け て で す わ!』
ドンドンと声に合わせて頑丈な扉を叩いている。そろそろ開けてあげないと駄目、だよな……。
ガチャ――
「ふう。もうドライったら、
あー! この子は今回のキャストの子に似てる! やっぱりヒロインだよ!
ん? 親友? お仕置き? は? ドライってヒロインの親友だったの? そんな設定俺の台本には書いてなかったぞ!
あ、ヤバい、返事してない、名前は――
「や、やあ、えっと、エリザベス?」
「エリザベスぅ~? いつもどおり二人の時はリズでよくてよドライ」
ヒロイン確定だよ! それが親友? ありえないだろ! それも愛称で呼んでも良いと!? ああー! どうなってんだよこれ!
てかまた返事止まってるし!
「そ、そう、ですねリズ。……そ、それで今日はどういったご用件で?」
「変な喋り方ですわね。気持ち悪いですわ。普通に喋りなさいな」
「わ、わかった。で、用事は?」
「う、うん。今からする相談は……そう! わたくしのお友達のことですわ!」
「うん。お友達のことだね」
「そ、そのお友達なんだけど、す!」
「す?」
「す、好きな人ができたらしいの!」
「おお! おめでとう! あ、……それで告白はどうしたらいいかとか聞きたいのかな?」
ヤバい。告白なんかしたことないぞ……。
「な、中々鋭いですわね今日のドライは。でも良いわ」
「あ、リズ、立ったまま話すのもなんだし、えっと、椅子無いのか」
「ベッドでよろしくてよ。あ、喉が渇いておりますの。お茶……はありませんものね、そのお水をいただきますわ」
「いいよ。ちょっと待って……あっ、そうだ」
このポット、毒入りの水が入ってた可能性があるんだよな。まあ飲みきったから中身はないんだけど。
「これ、今は空だからお水汲んでこなきゃ駄目なんだ」
「あら、そうなの? じゃあメイドを……ドライじゃ呼べませんわね。では、わたくしが呼んでさしあげますわ」
言うが早いか、部屋の戸を開け放ち――
「お み ず を く だ さ い ま せ!」
――叫んだ。
「これですぐにメイドが来てくださいますわ」
腰に手を置き胸をはるリズ。鼻息もすぴすぴどや顔だ。
…………ヒロインの少女時代めちゃくちゃ可愛いんだけど! 同い年だけどロリに目覚めそうだよ!
あれ? 元の年齢十五歳の場合、相手が十歳ならロリコンになるのか? なるか。っと、また返事――
「あ、ありがとう」
「なんてことありませんわ」
「じゃあ水を持ってきてくれるまで、話の続きを聞こうか?」
「そ、そうですわね」
ドヤ顔から一変、ほんのり頬を桜色に染め、おずおずとベッドにちょこんとすわる。
うん。可愛い。もうロリコンでも良いわ。それにドキドキしっぱなしだし、ドライの想い人も確定で良いだろ。
ピンクブロンドの髪を指に絡めて、くるくるいじりながらチラチラと
……あれ? もしかして――
お友達→エリザベス
好き→ドライ
恋愛相談→告白して欲しい
――なのか! テンプレなのか!
「そ、その、友達が言うには、相手の方はご家族に冷たくされ、
「そうなんだ」
ん? 冷たくしいたげられてる?
「それなのにその友達のことも、あ、友達もお家ではよく似ていますの。よく意地悪されていたり、とか。そ、それでね! す、好きになったお方は仲良くしてくれますし、お話もいっぱい聞いて、遊んでもくれますの」
それってやっぱり……。
「や、優しい子なんだね」
「そうですの! 凄く優しいのですわ! わたくしも家ではあまりよく思われてないことは知っていますでしょ?」
完全にわたくしって言っちゃってるし……。
俺は聞いてないけど、ドライは聞いてたってことだよな。だから今は頷いておこう。
「うん」
「だからお母様の療養でこの領地に来れて、初めて会ったとき、わたくし、本当は凄く怖かった」
怖かった?
「噂ではクリーク家の三男はどうしようもなく乱暴で、家族どころか領民たちも恐れてると聞いてましたの」
そんな噂が流れてるのかよ! ってかもう完全にまごうことなく相手は
「だからご挨拶に来て、同じ年だからお友達にと言われたとき、ここでもわたくしは――」
あ、完全に自分と言ってることに気付いたかな。桜色に染まっていた頬が、バラ色に変わったし。
こんなとき、気の効いたことを言わないとってなに言えば――
「俺、可愛いリズのこと好きだよ」
口が勝手に! なに言ってんだ俺!
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