溺れるほどキミに愛されたい

KOMUGI

第1話 彼と私の恋電車 始まりの夜①

10代まで憧れていた言葉。

【運命】

運命の出会い、運命の人。

いつか自分にも現れると信じていた。



気が付けば恋愛依存性。20代に入ると、途端に恋人がいない事に不安になってしまった。


純粋な恋が出来ない。

昔は20代で結婚したかったのに、結婚が出来そうな交際が出来ていない。


20代も真ん中になると、年下じゃない限り良いなと思う男性は相手がいる。


だから恋人が出来ても実は蓋を開けてみると、二股で私の方が浮気相手だった…とか、妻帯者だった…とか。

相手がいない人は問題持ちでDVの要素があったり、借金があったり。


気が付けば…体だけの関係で終わる。我ながら情けない。

そんなつもり…ないのに、結果そうなってしまう。いつだって私は本気なのに。


もう恋愛はイイヤって思っても、やっぱり寂しくなる。でも、出会うのも少し怖い。矛盾している感情に追い付かない。



陽菜ヒナは無駄にエロいからねー」

「なに?無駄にエロいって」


居酒屋で女子会。女4人での飲み会だけど、2人は家庭持ちで1人は彼氏持ち。フリーなのは私だけ。


「女から見ても、つい目がいっちゃうスタイルっての?男ならヤりたくなるんじゃない?顔も可愛い系だし」

「褒めてくれてありがたいけど、嬉しくない」

「そうだよねー。それで何度、痴漢に狙われたことか」


皆、昔を思い出してケラケラと笑う。4人とも同じ高校だったから知っているんだ。私が高校の時に受けてた被害を。


さすがに今はもう滅多にはないけど…高校生の時は最悪だった。

満員電車で30分の通学。ほぼ毎日の痴漢行為に我慢の日々。


私は昔を思い出した。


だいたい決まった時間帯に乗るとダメで、いつもは時間をずらしていたんだけど…部活の関係で、その時間に電車に乗らないと間に合わない時期があった。


その時期が…魔の痴漢遭遇期間。


「結局、王子の名前は聞いてないんだっけ?」

「うーん…『マサキ』って事しか知らない。だって言葉さえ交わしてないもん」

「勿体ないよねー」

「本当、今からしたら考えらんないよね」

「10代は純粋でしたからね」


あの頃、私はまだ純粋だった。痴漢行為に怯え声も出せないうぶな少女。

エスカレートしていく行為に、ただ耐えて泣きそうになっていた。


どの車両に乗っても、結局は痴漢にあってしまう。だから…諦めつつ同じ車両に乗る。

それが間違えだったのか、良かったのか。


私は16歳の時、ある人に救われたんだ。

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