Act26.夢未 ~約束のデートの話~

第65話

 週に一度通っている病院に星崎さんとまた、訪れて。

 彼といっしょに、先生に時々記憶が途切れることや度重なる悪夢のことを話すと、心の病気の可能性があるといわれて、今度検査をすることになりました。

 いつもより一錠増えた薬を手に、その帰り道を、わたしは歩いています。



「星崎さん、あの」

 前を歩く彼に、やっぱり言わずにはいられなくて、わたしは声に出しました。

「ごめんなさい。その……こんなにお世話かけて。病気になんかなって」

 少し呆れたように目をすがめて、彼は言いました。



「ほんとうに。懲りないね、きみという子は」

 どこかコミカルに、肩をすくめてみせて。

「そんなふうに自分ばかり責めていたら、病気にもなるわけだよ」

 肩越しに、どこか茶目毛のある瞳が笑いました。

「この恩は、めいいっぱい元気になって返してもらわないとね」

 その目をみて、なぜだか泣きそうになって。



「知ってますか? わたしの元気は、星崎さんにだいぶかかっているんですよ」

 目じりの涙を笑顔でごまかし、わたしはおどけて返しました。

「こんなことがあってすっかりうやむやになっちゃったけど。約束、忘れないでくださいね」

「約束?」

「あー、やっぱり忘れてる! 星崎さんの過去をつきとめたから、デートしてくれるっていうあれです!」

「あぁ」

 笑いながら、彼は澄んだ冬の空を見上げました。

「あったね、そんな話」

「……星崎さん」

 おもむろに、わたしは立ち止まります。



「まさか、がっつり遠出じゃなくて、駅周辺で適当にお茶して済ませようなんて思ってないですよね?」

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