第2話
土曜日のその日の朝、わたしは家の一階のドアを開けた。
「みんなおはよう」
モルモットのモルが回し車を元気よく回して、セキセイインコのピッピがチュクリとさえずり、年寄りおじいちゃんチワワのポムがゆっくりこっちを向く。
みんなそれぞれのやり方で挨拶を返してくれる。
フローリングの床の上にいくつも置いてあるケージ。
そこの中にいるたくさんの動物たちに、となりの小部屋に置いてある袋から順番に朝ごはんをあげていく。
うちは動物保護施設をやってるんだ。
お父さんが都心に施設をもっていて、そこにおさまりきらない子たちがうちにいるの。
この子たちの毎朝のご飯はわたしの役目。
「ほら、モル。そんなにがっつかなくてもまだご飯はあるよ」
フードののった手のひらをなめるように食いついてくるモルに笑い声をたて、ピッピの水を変えてポムにもご飯を出した後、みんなを眺めながら、あるときふっと肩の位置が落ちるのを感じた。
大好きな動物たちに囲まれてる。
でもちょっとだけ、さいきんわたしは落ち込んでいる。
行き場のなくなった動物たちを預かって、飼い主さんを探すお仕事は、わたしが小さかったとき、おとうさんがはじめた。
おかあさんもまえは楽しそうに動物のお世話してたのにな。
二人で協力して、たくさんの動物たちを助けていたのに。
ずっとうまくいってたのに。
今朝早くでかけていった二人のことを思うと、自然ため息が出る。
昨日夜遅くまで、一階から二人がけんかする声がきこえてきた。
親戚の中には、おとうさんとおかあさんは離婚するかもって言ってる人もいる。
原因はお仕事のことらしいけど、二人がけんかしているのを見るたびにじわじわって心に黒い染みのようなものが広まっていく。
二階の自分の部屋のベッドの中、ききたくないのについ、階下で言い争っている声に耳をかたむけてしまうんだ。
「はぁ」
思わずため息が出る。
ここにいたくないな。
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