3.神アイドル、現る

第22話

 だけど、純は少しでも考えてみなかったのだろうか。

 地図の通りに電車に乗って一駅、都心のテレビ局にやってきたとしても、平凡な中学生がそうやすやすとスタジオに入れるわけがないということを。

 芸能人ってやっぱりどこか世間とずれてるのかな。

 でもあたしだって人のことは言えない。

 受付のお姉さんに、

「えっと、A3スタジオで約束なんですけど」

 と言ってから、きれいな眉をしかめられ、

「お約束とはどのような?」

 ときかれるまで、この問題に思いいたらなかったのだから。

「関係者以外の立ち入りはできないのですが」

 お姉さんはいかにも不審げにこちらを見てくる。

 うう。そりゃそうだよね。

 純の名前を出しても、きっと信用してもらえないだろう。

 やっぱり帰ろう。

 謝って、きびすを返しかけたときだ。

 受付のすぐわきにある大きな四角い枠の機械(テレビ局の関係者の人がカードをタッチして通れるようになっているんだと思う)を通っていた男の子が、こちらに目を止めると小走りにかけてきたのだ。大きな緑のフードにジーパン。動きやすそうな恰好をしている。

「きみ、もしかして純さんが言ってた取材の子?」

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