第1話 夢にまで見たような

『新人類が殺人事件―駅前で通りすがりの男女4名を殺害平日の白昼『旧人類は淘汰されるべき』と叫びながら犯行」埼玉県西川口』


SNSのトレンドに出てくるニュース

リプライには様々な意見が投稿されていた


「移民を受けいれた結果がこれか」

「新人類を何故日本に入れた?総理は何をしてるの?」

「日本をプレゼントしたいの?」

「関東ももう終わりか」


世界は新人類と呼ばれる新たな人類を作った

その結果、食物連鎖の頂点は人間から新人類に変わってしまった


日本を初め、主要国は非難し遺伝子操作を行わなかった

だが、世界が遺伝子操作を止める前に驚くほどのスピードで新人類が出来上がってしまった

主要国、いや、かつての主要国の多くはは後退国として世界の勢力図は変えられてしまった

後退国は入国を禁止しようとしたが、どのような策も新人類の前には赤子の知恵である


新人類は世界に入っていき、各国の国政に居座っている


日本も例外では無い

新人類でなくても度し難い、緩い入国制限を引いただけであったため、新人類が日本にどんどん入ってきた


新人類がどのような罪を犯そうと処罰することはなく、彼らの行動はエスカレートしていった。


そこから5年

日本は主要都市含む1都1府6県を除き、新人類の国として生まれ変わった。




「アリス?何してるの早く帰ろ!もう、日も落ちちゃうよ」


刺すような冷たい風と夕日が差し込む教室で少女は同級生に呼ばれ、SNSをスワイプして閉じる


「ごめん!今行くよ」

「もう、東京も安全じゃなくなって来たんだから日があるうちに帰らないと」


アリスと呼ばれる少女は、カバンを手に取り教室を後にする。


同級生と学校を出て、帰路に着く人達の中をゆっくりと歩いく


「もう、早く帰らないと危ないのに」

「ごめんね…」

「もういいよ笑 昔は日本って夜中とか出歩いても大丈夫って言われてたらしいのにね」

「そうだね、昨日はついに埼玉まで入ってきたって…怖くなってきたね…東京は大丈夫なのかな…」


日本はせめてもの対抗で、自衛隊を配備しているが雀の涙であった。

たった5年で日本の殆どを奪われたのだ

それは日本だけでは無い

世界で起きていた

かつては、主要国であったアメリカ、EU各国でも同じであった


「分からない…あ、そういえば!」

同級生はハッと思い出したように口を開いた。

「新人類を倒した人達がいるって噂」

「新人類に倒した?どういうこと?」

普通に考えれば、新人類を倒せる人は新人類しかいない

けれど、彼らは頭がずば抜けて良いから仲間割れなどしないし、人間が身体能力や知力で勝てるとは到底思えない


「ん~、私もネットで見たから本当か分からないけど」

「ネットの情報か笑 じゃあ、そんなの妄想だよ。でも、もし本当にそんな人達がいるなら助けて欲しいな…怖い思いをしないで生きていけるようになりたいな…」

「そうだね…」


暗い話が2人を俯かせる

そんな時だった

黒とオレンジのコントラストを描く空に大きなサイレンが鳴り響く。

不気味で心臓をキュッ締め付けるような音に体を強ばらせた


「緊急警報、緊急警報 新人類が東京に現れました。家の防化扉を閉めてください。外にいる方は急ぎ近くの家に逃げるか、避難シェルターに逃げてください。」


その音声の後、近くの家は直ぐに防化扉を閉始める。


「アリス!早くシェルターに!」


その瞬間だった。

近くにいた人影が1つから2つに、いや、半分になった


「きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」


悲鳴の方に目をやると、地面にはかつて人だった物と赤く染まった血溜まりが広がっていた。


「アリス!」


同級生に手を引かれ急いでその場を離れる

帰路に着く人々は、混乱しながら逃げ惑う


一瞬だけ見えた景色には、手の形を変え、大きな羽を生やした怪物がいた

写真では見た事があったが、初めて見た

あれが新人類

奴らは人々を手当たり次第に狩り始める


なんで、どうして東京に新人類が…


アリスは疑問を持ったが直ぐに頭からかき消した

今は逃げないといけないから


近くの避難シェルターに同級生と一緒に逃げ込む

中には他にも人がいた。

ある人は身体を震わせ、ある人は泣き、そして、ある人は祈っていた。


私と同級生は肩で息をしていた

「はぁ…もう…ここに来たから…大丈夫」


シェルターにいる人々は恐怖を抱えながらも安心感を覚えていた。

絶対に安全と呼ばれていシェルターだ

奴らもここまでは来ることは無い

そう思っていた。


その時、ふと考えた

安全?誰がどうして安全って言ったのか

日本に新人類はいないのに誰が試したのか


アリスの嫌な予感は当たる

シェルターの固く閉ざされた壁はゆっくりと開かれる


「ミツケタ」


奴らは気色の悪い笑みを浮かべながら、そして一瞬で十数人を一掃する


「早く…逃げな…」


ここで言葉が詰まる

逃げる?どこへ?安全と言われていたシェルター以上に安全な所などあるのか?


シェルターにいる人間はその場に立ち尽くし、死の時を待っていた


同級生は泣きながら祈る

が、現実は残酷だ

アニメのような猶予も最後の言葉もなく切り捨てられる


無惨に転がる体

辺りに立っている人間は1人もいない


最後の1人だった

泣く暇も祈る暇も貰えない

最期の時を目を閉じ待つしかできなかった


だか、いつまで立っても最期の時は訪れなかった

どうして…


「ドウシテ」


奴らから同じ疑問が出ていた

さっきまで目の前にいた数十人奴らが、1桁程にまで数を減らしていた

自衛隊でも倒せない奴らが地面に横たわっている


そして、目の前には奴らとの間に何人か立っていた

その中の男が言葉を発した私に向かってだと思う


「ごめん、遅くなって」


これが私と彼との出会いだった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎週 土曜日 10:00 予定は変更される可能性があります

閉ざされた世界で悪魔は笑う-堕天が光になるまで- たかてぃん @takatin1020

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ