この作品はフィクションです。 ─ 実際の人物・団体・事件・地名には一切関係ありません ── 【Season Ⅰ 】

第1話 大江戸嵐、最初の事件

　東京にある海原大学キャンパスは、秋の陽射しに包まれて学生たちの笑い声が響いていた。

　しかし、その明るい雰囲気の中で一人の学生が突然倒れ込んだ。

　彼の手には、破れた白い粉の袋が握られ周りには散らばった袋がばら撒かれていた。 周囲の学生たちは驚き混乱が広がった。

　すぐに警察が駆けつけ、事態は思わぬ方向に進展する。 大学の名声が揺らぎ、関係者たちの運命が交錯（こうさく）することになるとは誰も予想していなかった。

　◇◇◇

　大江戸嵐（おおえど あらし）は、東京の海原大学で卒業したばかりの新米刑事だった。 彼は大学時代の思い出が詰まったキャンパスで今や捜査官として事件に向き合うことになり、大学の大麻事件の捜査を担当することになったのだ。 彼はかつての仲間たちが、この大学で学び成長していく姿を見守っていた。 そのため、事件に対する思い入れは強かったのだ。

　倒れた学生の名前は田中翔（たなか しょう）。

　大学の人気サークル『ラップ愛好会』に所属しており、周囲からも愛される存在だった。

　しかし、彼の死は単なる事故ではなく、何か大きな闇が隠されていることを嵐は直感的していた。

「これは、これは期待の大型新人、大江戸嵐くんでは、あ～りませんかぁ。 もしかしたら、もう犯人が解ったのかなぁ～ 」

　霊和警察署捜査一課の玉井次郎（たまい じろう）が嵐に絡（から）んできた。

「 たま いじろう（玉井次郎）先輩、……」

嵐が呟くと、 つかつかと顔に青筋を立てながら玉井次郎刑事が近づいて来て、

「いいか、俺の名前は『たまい（玉井）』ここで切って『じろう（次郎）』だ ！

　変なところで切ったり、続けて呼ぶんじゃねぇ ！」

　嵐は、玉井次郎の厳しい言葉に少し身を縮めていた。彼は大学時代、同じ教授の特別抗議を受けていたため、その威圧感には慣れているつもりだったのだが、今は捜査官としての立場が逆転している。彼は冷静さを保ちながら、田中翔の死の真相を探るために心を奮い立たせた。

「先輩、田中の周りの人たちに話を聞いてみる必要があります。彼がどんな生活をしていたのか、何か変わったことはなかったのか、詳しく調べてみましょう」と嵐。

「おう、いい心掛けだ。だが、田中翔の死はただの事故じゃない。大学の名声がかかっているから、上層部も動いてくるだろう。慎重に行動しろよ」と玉井は言い、嵐の肩を叩いた。

　嵐は、田中が所属していた『ラップ愛好会』の部室へ向かった。部室はキャンパスの一角にあり、音楽と笑い声が絶えない場所だった。しかし、今はその雰囲気が一変していた。部員たちは沈痛な面持ちで、田中の死を悼んでいた。

「田中のこと、何か知っていることはないか？」嵐は部員たちに尋ねた。

　一人の女子部員が涙を流しながら言った。「田中くんはいつも明るくて、みんなを笑わせてくれる存在だったわ。でも、最近は少し元気がなかったように思う。何か悩んでいるようだった…」

「悩み？それは具体的に何かな？」嵐は興味を持った。

「彼、最近、変な人と関わっているって噂があったの。誰かが彼に何かを強要しているみたいで…」その部員は言葉を詰まらせた。

「変な人？詳しく教えてくれ」と嵐はメモを取りながら問い詰めた。

「名前は知らないけど、いつも夜遅くに部室に来ていたらしい。田中くんがその人と一緒にいるのを見たっていう話も聞いたわ。でも、何をしていたのかは…」

　その言葉を聞いた瞬間、嵐の脳裏に何かが閃いた。田中が関わっていた「変な人」が、彼の死に繋がっている可能性がある。彼は急いで部室を後にし、玉井の元へ戻った。

「先輩、田中が最近、変な人と関わっていた可能性があります。部員たちの話によると、夜遅くに部室に来ていたみたいです」と嵐は報告した。

「ほう、変な人か。具体的な情報はあるのか？」玉井は興味を示した。

「まだ詳しいことは分かりませんが、部員たちにもう少し話を聞いてみます。何か手がかりが得られるかもしれません」と嵐は意気込んだ。

　その後、嵐は部員たちに再度話を聞くことにした。彼は田中が関わっていた「変な人」の正体を突き止めるため、情報を集めることに全力を尽くした。

　数日後、嵐は大学の図書館で資料を調べていると、ふと目に留まった記事があった。それは、近年大学周辺で増加している薬物事件に関するもので、特に大麻の密売が横行しているという内容だった。田中の死がこの事件と何らかの関係があるのではないかと、嵐は直感していた。

「先輩、田中の死が薬物事件に関係しているかもしれません。最近、大学周辺で大麻の密売が増えているという記事を見つけました」と玉井に報告した。

「なるほど、田中がその密売に関わっていた可能性もあるな。だが、証拠が必要だ。まずは、大学周辺の情報を集めて、密売の実態を探る必要がある」

　嵐は玉井のアドバイスで大学周辺のクラブやバーを訪れ、情報を集めることにした。彼は地元の人々や学生たちに話を聞き、密売の手がかりを探し続けた。すると、あるクラブのバーテンダーから、田中がよくその店に来ていたという情報を得た。

「彼はいつも友達と一緒だったけど、最近は一人で来ることが多かった。何か悩んでいるように見えたよ」

　バーテンダーの情報、嵐はその言葉に耳を傾け、田中が一人で来るようになった理由を考えた。もしかしたら、彼は密売に関与していたのか、それとも誰かに脅されていたのかもしれない。

「その店で、田中が誰かと会っているのを見たことはありますか？」嵐はさらに質問した。

「うーん、確かに一度、見たことがある。黒い服を着た男と話していた。何か真剣な話をしているようだったけど、内容は聞こえなかった」とバーテンダーは思い出したように言った。

　その情報を元に、嵐はその黒い服の男を探し始めた。彼は大学周辺の監視カメラの映像を確認し、田中とその男が一緒にいるところを見つけ出した。映像には、男が田中に何かを手渡す様子が映っていた。

「これが手がかりになるかもしれない」と嵐は思い、映像をもとに男の身元を調べることにした。

　数日後、嵐はついにその男の正体を突き止めた。彼の名前は狩魔奉先（かるま ほうせん）、過去に薬物関連の犯罪歴がある人物だった。嵐はすぐに玉井に報告した。

「先輩、田中と会っていたのは狩魔奉先という男です。彼は過去に薬物の密売で逮捕されたことがあるようです」

「なるほど、田中が彼と関わっていたとなると、事件の真相が見えてきたな。早速、狩魔を追い詰める必要がある」

玉井の言葉に嵐は決意を固めていた。

　嵐と玉井は、狩魔を追跡するために捜査を進めた。彼の行動を監視し、ついに彼が密売を行っている現場を押さえることに成功した。

「狩魔奉先 ！ 麻薬取締法の現行犯で逮捕する ！」

嵐は玉井と一緒に突入したが、

「たかが、ポリ公二人で俺達を捕まえることが出来ると思っているのかよ ！ お前ら、ヤッちまえ ！」

狩魔の仲間達は十人位いたが、対する警察側は嵐と玉井だけだった。

玉井が後ろに下がり県警本部に応援を呼んでいる為に実質、嵐一人だけで狩魔たちを相手にすることに成る。

「おい、大江戸 ！ 打撃系は封印だからな ！

ハングレとは云え、お前が殴ったら相手が死ぬぞ ！」玉井が嵐に怒鳴った。

たった一人だと舐めていたせいか、ハングレ達は激昂した。

「舐めやがって ！」

ナイフや特殊警棒を持って嵐を襲うハングレ達……しかし、舞うように躱（かわ）し投げ飛ばしながら関節を外していく嵐。

「激流を制するは静水、激流に逆らえば飲み込まれる。むしろ激流に身を任せ同化する。おまえ達は殺気が強すぎる 半人前の技では俺は倒せんぞ 」

そして、難なく全員が嵐により戦闘不能にされてしまった。

「ばっ 化け物 ！」 狩魔の仲間の一人が洩（も）らすと、

「ぜ、全滅 ！？ 12人のハングレが全滅 ？ 3分もたたずにか ！？」狩魔は恐怖した。

やがて、応援の警察官たちが来て狩魔を逮捕した。

◇◇

「田中翔の死に関与しているのはお前だな。彼に何をした？」玉井は狩魔に詰め寄った。

「知らねぇよ、あいつが勝手に来たんだ。俺はただ商売していただけだ」と狩魔は冷たく返した。

「商売？田中はお前に脅されていたんだろう。彼が何かを持っていたのを見たんだ。お前が彼を利用していたんだろう」と玉井は追及する姿を嵐は勉強するように観察していた。

腕力には自信はある嵐だが、容疑者との交渉は素人レベルの為だ。

玉井の追求に狩魔は一瞬動揺したが、すぐに冷静さを取りし「あいつが勝手に手を出してきたんだ。俺は関係ない」と言い放った。

　嵐はその言葉に納得できなかった。田中は明るくて優しい性格だったと聞いている。そんな彼がそんな危険なことに手を染めたことを信じたくなかった。 玉井の追及は尚も続く、

「お前が田中を利用していたのは明らかだ。彼が何かを持っていたのはお前の指示だろう。証拠は揃っている。お前は逃げられない」と玉井は強い口調で言う。

　狩魔は一瞬、怯えたような表情を見せたが、すぐに冷笑を浮かべた。「お前ら警察が何を言おうと、俺には証拠がない。田中が勝手にやったことだ」と言い放ったのだ。

嵐はその言葉に怒りを覚えた。田中は無実の罪で命を落としたのだ。彼の死の背後には、確実に何かが隠されている。嵐は決して諦めないと心に誓った。

『絶対にお前を許さない。田中のためにも、真実を明らかにしてみせる』と嵐は心に決めた。

　その後、玉井と嵐は佐藤の背後にいる黒幕を探し始めた。彼は大学内での密売の背後には、もっと大きな組織がいることを確信していた。嵐は大学の関係者や、過去に薬物事件に関わった人物たちに話を聞き、情報を集め続けた。

　数週間後、嵐はついにその組織の存在を突き止めた。それは、大学周辺で密売を行っている犯罪グループで、田中もその一員として利用されていたのだ。嵐はそのグループのリーダーを追い詰めるため、玉井と共に捜査を進めた。

「このままでは田中の死は無駄になってしまう。必ず真実を明らかにする」と嵐は決意を新たにした。

　最終的に、嵐はその組織を摘発することに成功した。リーダーや関係者たちは逮捕され、田中の死の真相が明らかになった。

やはり、彼は無理やり組織に巻き込まれて命を落とすことになったのだ。

　事件が解決したが、逮捕した組織は麻薬密売組織の末端に過ぎなかった。

しばらくして、嵐は田中翔の墓前に立ち静かに手を合わせ、心の中で謝罪した。「ごめん、田中くん。君を守れなかった。だけど、君のために必ず真実を明らかにする。安らかに眠ってくれ」と誓った。

嵐の師匠に武術はギリギリ一人前と認められた、だが頭脳は……だ。 嵐の妹たちくらいに頭が切れる相棒が必要だと理解した嵐。

田中の死を無駄にしないために、これからも正義を貫いていくことを誓ったていた。

嵐の心には、人々を守るために戦う決意が宿っていた。