想
ニーマ
季節
何回目になるだろうか。
夏が目を閉じ、冬は静かに目を開けようとしている。
5月頃から9月半ば近くまでは玄関の扉を開けると眩い光とともに夏が元気に
「やっほー!!おはよう!今日も元気出していこう!!」
と肩腕をブンブン回しながら大きな声ををかけてくる事が鬱陶しいと思っていたが、9月が終わりかけの今ではりんごが1個まるまる入りそうなほど大きなあくびをし、少し気怠そうに伸びをして
「んー…そろそろ寝ようかな…。君もまた眠ってしまうかい?」
とまるで今にもどこか遠くに行ってしまいそうな、消えてしまいそうな声でそれでも諦めず、玄関の扉を開けるたびに優しい光と共に静かに声をかけて来た。
月替ってもまだ少し暖かく、腕を出す服を着ていてもまだやわらかく感じていた。
今日も玄関の扉を開けると夏は、声を絞り出し、何度もあくびをして、水分の足りない乾いた目をこすっていた。そんな夏の様子を心配そうに、でもどこか安心しているような暗い笑顔で、夏の背中を支えている影がいる。
冬だ__。
それから数日も経つと布団も草木もまだ寝ていたいようなそんな様子を感じながら今日も俺は玄関の扉を開けた。灰色の風が顔に強く当たり、少し眉をひそめた。
「おはようございます。本日も頑張りましょう。」
静かにきれいなお辞儀しながら今日も声をかけられた。
いつもは少し暖かく、優しい扉が今日はどこか淋しく感じた。
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