無色透明少女

@kanon3139

プロローグ

曰く、人は他人に認識されて初めて人になるらしい。


「ねえねえ、ヌタバの新作見た?帰り寄ってかない?」

「見た見た。ちょーおいしそうだった!」


何もシュレディンガーだとか難しい話じゃない。

自分では優しくあろうとしても八方美人だと後ろ指を指されたことはないか?


「今週の真希ちゃんのグラビアやばくない?」

「ばっかお前!それより由衣ちゃんだろ!とてもじゃないけど同い年だとは思えないわ。」


結局は他人がどう見ているかでその人の個性が決まってしまうということだ。

例えば「流行りものに乗っかるギャル」とか「さいてーなクラスの男子」とかね。


「そういえば最近事故が多いよね。」

「ベランダの手すりも老朽化してて男子が落ちちゃったんだっけ?」


でも例えばギャルは新作に使われているフルーツが大好物なら?

例えば男子は実は方針を変えたアイドルを心配してるが口に出せないシャイな子だったら?

印象はガラッと変わってしまうのではないか?


「そういえば今度ウチでバーベキューやるんだけどさ......」

「そういえばこの前こんなことが......」

「そういえば.......」


だけどそんなこと世間は知らないし、気にしない。

自分の知らないことなんて知ろうとはしない。


ならこの感情は無駄なものなのか?他人から評価されず、世間の目になにも効果を与えられない感情は無駄なものか?


断じて違うだろう!

そこにはこうしたいと!こう生きたいと願った確かな情熱があったはずだ!


これは偏見に満ちたこの世界で「私」が「私」になる物語だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る