第1話
去年の四月のこと
あなたと出会ったのは演劇部の部活動見学の時
あなたと目が合って「あ、私多分この人のこと好きになる」って思ったの
そして先輩方の仲も活動内容もよさそうだったからそのまま演劇部に入った
その選択が一番の間違いだったのかもしれない
1週間後、私は入部したことを公開していた。
さすが演劇部。仲のいい演技もお手の物なのね。
部長の絶対王政みたいになってた。しかもヒスりがちだし頑固。入りたての後輩にどうしろってんだ。
そんな中でも優しく接してくれる先輩方ももちろんいた。去年の秋ごろにはほぼ全員退部しちゃってたけどね。
先輩はその仲良くしてくれるタイプの人だった
私は人前でマスクを外したくないという理由で裏方を志望した
たまたま先輩は裏方専門の人だったから、話す機会が多かった。
でも私はそこまで仲良くしようとはしなかった
私は中学の頃、同級生に異常なほどに好意を持たれ、ストーカー行為や殺害予告をされたことがあった。
それがトラウマになり、恋愛ができなくなった。人を好きになることが怖かった。
そしてそれでも人を好きになり近づこうとする自分が気持ち悪かった
何度も離れようと忘れようとした
でもそれができなかった
2年同士で何か言い争いが起きたのか起きたのかはわからないけれど、文化祭の劇の練習期間中にだんだん先輩は部活に来なくなった。
何か役割があったわけじゃないから部としては特に困ることはない。滞りなく練習が行われていた。
私も何事もないかのように役者のセリフの練習に付き合っていた
”表情があまり顔に出ない性格でよかった”なんて思いながら。
そこからは当然先輩との絡みなんてものは無く、ただ日々が過ぎていった。
この人を忘れるチャンスだなって思ってしまった
好きになってしまった時点で忘れられるわけがないのに
後悔と君 藍町空 @imati_sora
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