第14話 夏休み
牡丹がうつ状態から抜ける頃には学院は夏休みに入っていた。
そういえば、事件のあと学院に行くと千秋の姿はなく、周りの人間も千秋との記憶がすっぽりと抜けていた。千秋は一体どうなったのだろか?
まぁ、行方知れずの人物を深追いしてろくな事に巻き込まれるのは世の常。俺も数日後には千秋の記憶はすっかり抜けていた。
というよりも、最近接してくる人物がいて、彼は登山サークルに所属していて、かなりのタフ・ガイだ。
名字は忘れたがた峻也という赤みを帯びた髪をした。陽キャ代表みたいな奴だ。まぁ、どうでもいいのだが……
さて、その後の話はここまでとして、夏休みに何をして過ごしたかを話そうと思う。
多分だか俺と牡丹どの関係も気になる人もいるだろうから話そうと思う。
学院が夏休みに入り、課題自体は、配られた時点で終わらせているので、休み期間中は自由に過ごせる。そこで今年は、久しぶりに別荘で優雅に過ごした。
別荘は臨海都市の紫波市に有り、リビングの窓からは海が一面に広がっている。
別荘には、プライベートプールがあり、かなり充実している。まぁ、アメリカの豪邸を想像してもらえばなんとなくわかるだろう。
別荘に着くと、まず、水道の元栓を開け、電気も点けて、生活のできる空間にする。
掃除は月に2度来て掃除しているので大して汚れていない。がやることが何一つない。
とりあえず。浜辺に行きたいと、燐が五月蝿いので少し移動疲れを癒やしてから、市営海水浴場に向かった。
市営海水浴場には徒歩5分程度で着くのでそこまで遠くない。
海水浴場に着くとそれぞれ、水着に着替え海へと入るが俺と牡丹は着替えず海に入らなかった。なんせ俺は背中の傷が未だ少し目立つのと、牡丹も露出の多い服がトラウマになっているからと、両者共、SUTが原因で海に入れない。
じっと、浜辺で過ごすのは最近の炎天下もありキツイので海の家で過ごすようにした。
涼しいに尽きる。にしても人がいない。いつもこの時期は地元の家族や観光客で盛況なのだが……
すると、爆発音のような轟く音が海から響き、飛沫を上げて巨大な怪魚が飛び跳ねる。
「えっ?」
牡丹が声を出す
「あんなに大きい魚いました?ここ?」
すると海の家の店員が、
「最近、現れて、現地の漁師たちも困ってんですよ〜」
そりゃあ、そうだろうというか。当然だろう、戦艦と渡り合える様なデカさだ。
「兄ちゃん?、かなりガタイがいいしたおしてくんねぇか?」
ここの常連らしい漁師に言われた。
思わず目を丸くして、僕ですか、と身振り手振りで聞き直す。
「あんちゃん、鍛えてるでしょ?」
隣りにいた少し厳つい漁師に指摘された。図星だ……
確かに鍛えてるが……流石に無理と言おうとしたら、漁師たちがこちらを期待の眼差しで見てくる、まともにそちらを見れない…………はぁ~とため息をして仕方なく引き受けることにした。
――翌日――
渋々、ある程度の武装をし、漁師さん協力の元、沖に出る。
ボコボコと海面に泡が噴き出す。次の瞬間怪魚が飛び上がり船が転覆しかけるほどの揺れが来る。
飛び上がった怪魚に向け弾丸を打ち込むが鱗が硬いのか全く効かない。何となくわかっていたが、これほどとはすべてが規格外だ。仕方ない。かなり値は張るが対戦車用の弾丸を用意した。
俺のお小遣いが…………と考えながら、弾丸を打ち込むと、あっさりと倒せてしまった。なんというか呆気ない。怪魚はプカンと海の上に浮かんでいる。
「あんちゃんやるね〜!!」
漁師の一人が俺の肩を叩き大喜びで話しかけてくる。
港に戻ると、漁業組合人がこちらに近寄ってきて。
「本当に助かりました。これで安心して漁業が再開できます。ほんとうにかんしゃいたします。」
と深々とお辞儀をしてくれた。
「お礼に今回の費用こちらでお支払いさせていただきます」
と組合長が言う。ラッキー!!と思いながら精算すると、マグナム弾が五発で415円と対戦車用弾一発が12万……計12万415円を電卓で見せるとぎょっと目を丸くして動揺しながら、桁を確認して、
「後で振り込ませていただきます。」
良かった、金額を聞いてやっぱ無しとかやだからな。とか思ってたら、組合長の見てる方向が違った。漁師さんの方を見ている。
「会長〜迷惑かかったんだ払う以外ないだろ?」
と、小声で啓されてた。何と言うか、立場が上でも弱い人は居るんだな〜と思いながら苦笑いでその後の手続きや怪魚の下処理を済ました。
その日の夜は別荘に今朝の漁師の皆さんと一緒に狩った魚でご馳走になり、妹三人も美味しい料理に舌鼓を打っていたが、別荘にいる間はずっと魚料理だったため、最後の方は飽きたと愚痴をこぼした。俺自身も肉が恋しくなった。
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