EPⅥ かつては輝かしかった神話の影で――
プロローグ かつては英雄だった
胸に刺し貫かれた傷が人を死に至らせるわけではない。
それは人の歩みが終わりに追いついたというただそれだけのことであり、どれ程平和な人生を歩んでいようとも、定められた運命から逃れられるわけではない。
だが――……、勇者と魔王の因縁も同じようなものだと言われて、納得が行くだろうか?
二つの存在の奇妙な繋がりが、原初の頃より続くものである事、それがこれからも変わらない物であると知って、戦慄した。
或いは、この世界に存在するありとあらゆるものは定められていて、人間にはどうすることもできないのではないか。そう考えるに至る多くの経験を通して――、
男は沈黙を愛するようになった。
勇者ソムヌスの「元相棒」は、人々の尊敬と敬意という光当たる英雄から、影に潜み、時折雲の合間から差す星のように、闇に生きる人々を照らすささやかな明かりとなった。
彼らの為であれば、男は何でもする。そうすることが変わらない運命に対するせめてもの抵抗とならんことを願って。
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