第8話 大丈夫、他人だ。
目が追う。
笑ってる。
声が聞こえる。
苦しそうに笑ってる。
なにか拳を振り上げて怒ってるように笑ってる。
楽しそうにしてる。
嬉しい。
今日も笑ってて、それがなんだか嬉しい。
ずっと笑ってて欲しい。
苦しそうなのは困るけれど、楽しそうに笑ってて欲しい。
今日はあの子を見かけなかった。
さすがに他の教室を覗き込むことは出来ない。
たまたま見る程度にしないと。
今日は登校時、下駄箱であの子を見かけた。
友達と一緒に朝から元気にしていた。
ラッキーだ。
週末だ。
学校に行かないという事は、あの子を見かける事は無いということだ。
今日もどこかで笑っているといいな。
少しソワソワする。
今日はあの子を見かけるだろうか。
でも気をつけないと。
絶対に迷惑にはなりたくない。
嫌な思いをさせたりしたら、俺はそれだけでダメになってしまう。
廊下ですれ違った。
そちらを見ないようにするのに努力した。
自然にすれ違えただろうか。
大丈夫、大丈夫だ。
階段の踊り場で不意にぶつかりそうになった。
「ごめん」
「大丈夫」
言葉を交わした。
言葉を交わした。
だめだ。
もう何が自然で、何が不自然かよくわからないようになってきた。
落ち着け。
相手は自分を知らない。自分を認知していない。同学年だから見覚えぐらいはあるかもしれないが、認識していない。
他人だ。
どうしようもないほど、他人だ。
大丈夫。大丈夫だ。
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