君を好きだけどそれは世界に関係ない

雪月

第1話 きっかけ

 恋なんて思い込みとホルモンの暴走だ。



可愛いなぁと思った。

可愛い子がいるなぁと、ただ思った。


 だから友人にそう言っただけだった。でも返事は予想外だった。

「え、そうか?」

「あれ?可愛いと思ったんだけど」

その友人とそんなに趣味が合わないと思った経験は無かった。年単位の付き合いだし、ある程度は友人の事を知っているつもりだ。

「あの子だよなぁ、うーん」

普通かも、という友人の言葉に結構な衝撃を受けた。

確かにアイドル級だとか、みんなに大人気とは言わないけど可愛いと思う。

「ああ、そうか」

納得したように友人が、うんうんと頷いた。

「お?」

「あのな」

「うん」

「単にお前があの子を気に入ってるんだよ」

脳が理解するのに数瞬かかる。

「え、マジか」

「マジマジ」

少し距離があるので何を話しているのかは分からないけど。友人だろう周囲の人と何かを話しては大笑いしているあの子を見て、もう一度俺は言った。

「マジか……」

「マジです」


 そうか、個人的に贔屓目が入ってるだけなのか?

疑問を感じるような、納得するようなそんな始まり。


 そうして、思い込みは加速する。



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