第36話

それから年を越して、バレンタインデーの季節になった。




「さやかちゃんは今年はあげる人いるの?」


「いますよ。おじいちゃんと、お父さんと、お兄ちゃんと、会社の人達です。沢山作らなくっちゃ」


「そういうことじゃないから。分かってるでしょ」



先輩にバインダーで肩をコツンと小突かれた。



「先輩だって私があげる人いないの分かってるくせに」


「はぁ。今のうちに唾つけとかないとあっという間に歳とるわよ」

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