3818(卒業式)
第18話
卒業式の翌日。
昨日から実家に帰って来ているお姉ちゃんが朝一、部屋のドアを開けたばかりの私を抱き締めてきた。
びっくりして、何が起こったのかわからない。
身体を離したお姉ちゃんは泣いていて、まあ、昨日も私と同じくらいかそれ以上、お母さんもお父さんも含めて泣いていたから、珍しいと思うことはなかったけれど。
どうして泣いているの、とは単純に。
「お姉ちゃ」
「大好きよ、奏。奏が一番好き」
「……?」
一階のリビングに降りると、薫もいて驚いた。
「奏」
血の繋がりも何もない、ただ生まれた時から知っている薫は、照れてしまうくらい愛おしそうに名前を呼んだ。
お兄ちゃんか、っていうくらい。
もう、二年ほど前からお義兄ちゃんだけど。
薫の前の席にはお父さんとお母さんも座っていて、こっちを見ていたお母さんが「座って」とやさしく。
薫の隣の席に着くと、いつも朗らかで、けれど真っ直ぐで芯の通った印象のあるお母さんは、「奏も、高校を卒業して、」と。
言いかけて。
震えた背中を隣のお父さんが擦って言葉を繋げた。
「奏は、お母さんによく似てる」
聞き慣れた言葉。
大好きなお母さんに似ていると言われることは小さな頃からとても嬉しいことで、でも、私は、その本当の意味を考えたことなんてなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます