第13話
私には、歳が20離れた姉がいる。
7歳の私がそれをおかしいと思うことはなかったけど、近所のおばさんはそうじゃなかった。
少し気になっていた男の子が朝突然目の前に来て、私の机を両手で叩いて、「おまえのねーちゃん、ねーちゃんじゃなくて『おばさん』だろ?」と言ったのには酷く驚いた。
驚いて、わけもわからず悲しくて、好きな担任の先生の授業内容も頭に入らなくて、走って帰った――――春。
お父さんは勿論お母さんもお姉ちゃんも帰ってきていなくて、でも家にいるのはどうしてか怖くて、玄関に赤いランドセルを放って近くの土手まで走った。
鍵を閉めたかどうかなんて最初から頭にないくらい。
土手には先客がいた。
春の昼に、スーツ。
黒っぽい髪は短く切り揃えられていたけれど、襟足や耳の上の髪がくるくると跳ねていて、春風に戦いでいて、面白かった。
けど怖いから。
危ない人について行っちゃいけないことはわかっているから。
ちょっと近くに、ちょこんと腰を下ろして。
一緒に、春風に髪を戦がせた。
その内、その隣から鼻歌が聞こえてくる。
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