2404(左利き/花/歌)

第7話

「変態だから」




む、と隣の人へ視線を向ける。




「じゃなくて。間違えた。仕事だから来れないらしいけど、今日は別に薫要らなくて」




「ああ」





24。


院生の僕と、出版社に勤めている彼女がいた。



“薫”とは彼女の彼氏だ。よく変態と言い間違えられる彼氏。




「学もあんなのとつるむから年々変態臭してくるのよ」


「変態臭……」


「初めて会った時の学はもっと純粋な目をしてた」


「そう……?けどあい漓が薫のこと変態って言ってるの久々に聞いた。なんかデジャヴ」




「久しぶりだもんね」の代わりに笑みを浮かべる彼女と、夜の住宅街を歩く。



平日の今日は、彼女――あい漓の仕事終わりに合わせて最寄駅前で待ち合わせていた。彼女の妹、“奏”の誕生日だからだ。




「4歳だっけ」


「うん」


「早いね」


「ん。忙しいのに来てくれてありがと。なんだろうね、妹、会ったこともない学のこと酷くお気に入りみたいで」


「……凄いね、サークルの写真だけで」


「まああんた目引くしね。メンクイなところあるのかな……」




街灯に照らされて足元に造られた影に視線を落としながら、閑静な住宅街に話し声が堕ちて行く。



「あい漓と同じじゃん」




「違う。やめて」


「ははは」


「わざとらしい」



脛を蹴られてよろめく。

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