第2話
――…
―…
…
「明子ー?いるなら下に降りて来なさーい」
「はーい、今行くー」
一階からお母さんが喧しく私を呼ぶ。
私は、開いていたアルバムを静かに閉じた。
…暑い、高校ニ年生の夏。
「めいこー?早く来なさーい!」
「はぁーい」
ごめんよ、お母さん。
お母さんは、蝉よりもうるさいです…。
下に降りて行くと、お母さんは忙しくキッチンとリビングとを行き来していた。
「何かあったの、お母さん」
「今日ね、お祭りがやるみたいなのよー」
「え?お祭り?」
「そうそう、近くの公園のお祭り。明子、覚えてない?小さい頃は毎年行ってたんだけど、町内会の会長さんが変わっちゃって、しばらく忙しいとかでずっと中止で」
そう言ってお母さんは、朝ご飯をぼそぼそ食べるお兄ちゃんに「ね、覚えてない?龍」と問いかけた。
お兄ちゃんは、「んー?あぁー…」としか答えなかった。
「……」
え、お兄ちゃん、それだけ?
結局、どっち?
「…ええと、それで?お母さん」
「あー、それで。今日の夜ご飯、お母さんそこのお祭りで売ってるお好み焼きが食べたいなーと思って」
「お好み焼き?小さなお祭りでそんなの売ってるの?」
「それが売ってるの。もう、あのお好み焼きがずっと食べたかったのよねぇ」
「だからお願い、明子買ってきてくれない?お母さん、今日夜仕事が入っちゃって行けないの」
「わ、私が行くの…?」
私はチラ、とお兄ちゃんの方を見た。
お兄ちゃんはそれを待っていたかのように、キッ!と一言、「俺バイト」と言った。
「……。わかった…私行ってくるよー…」
嫌だなあ、クラスの人とかに会ったら。
――…私は、幼い頃から内気な子で。
顔も可愛くないし、ハッキリ言って見た目だって普通。
更に気も弱かった。
だから、できれば気に知らない人と会うのは避けたいと思う気持ちがあった。
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