第77話
艶やかな垂れ目が濡れたように光る。
背筋が凍った。
私は直感的に本能的に、何か、何か言葉を紡がないとと思って
「花山院さん…?」と男を呼んだ。
だが、それがいけなかったらしい。
何が琴線に触れたのか、私の声を聞いた男は冷たい眸をしたまま指先を肌に滑らせ、決死の抵抗をものともせず、
私の中に、長く冷たい指を沈めた。
「ァ、あ、……っ!」
指先の温度とは裏腹に酷く熱い圧迫感に身体が跳ね、背中がのけ反る。
「ま、待っ…て、お願、動かさない、で」
息絶え絶えにパーカーの裾を掴んで伝えるも、覆い被さった男は視線を絡ませたままそれでいて願いは聞かず、代わりに指を早めた。
「やぁ、ぁ……!」
唇の端から、勝手に声が溢れていく。
閉じようとする脚も開かされ、指を引き抜かれた瞬間内腿に歯を立てられて声を上げる。
「…っハ、ドMかよ」
悠々嘲笑う男はやめてと声を上げる私に「何。『善』に助けてほしい?」と続けた。
「ちが…善くんは」
言い掛ける。
責め立てられた動きが止まって、
一瞬の内にそもそも『浮気』って言った? と唯一冷静な頭に巡って、
呼吸も整う前に、口にした。
自惚れているわけではないけれど、
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