第71話
————…
「こーら、桐! 大丈夫!?」
社宅までの帰り道、足が縺れた所送ってくれている善くんが支えてくれ、私は「大丈夫大丈夫!」と声を張り上げた。
コンクリートが街灯に照らされて濡れているのが判る。
いつの間に雨が降ったのだろう。
「だからお酒は止めておきなさいって言ったでしょ!?
アタシが席外した隙に飲むなんて…手癖の悪い」
「だぁって飲みたい気持ちだったんだもん〜」
善くんが席を外した瞬間手を伸ばしてイッキしたお酒。
激強だった。
善くんの方が心配になる。
チラ、と見上げて「善くん…大丈夫? 悩み事? 私ばっかり聞いてもらっちゃってごめんねぇ」と頭を下げると「今日はそのつもりだったでしょ」と返ってきた。
「ごめんなさい〜」
「ったく」
ちょーっとふわふわするくらいで酔ってはいない。
意識はあるし、後悔はない。
「ほら、マンションの下 着いたわよ。ちゃんと鍵ある?」
「ある! 筈。善くん今日はどうもありがとう」
「いいから。
もー。本当心配…。気を付けなさいよ」
鍵を握りしめてエントランスを越すまで見送ってくれていたとてもとても面倒見の良い善くんと別れ、私はいつも通りの21階へと舞い戻った。
「うぐぅ」
胃の辺りを摩りながらエレベーターを降り、角を曲がってすぐ、私は危うくリバースするところだった。
家の前の廊下に件の妖怪さんが座り込んでいて。
丁度顔を上げた彼と、目が合ったからだ。
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