第69話
「すっ、え?一緒に居るっていうよりかは出て行かないから居るって感じなのよ?」
「そうじゃなくて。その妖怪くんの方がキリちゃんを、ね」
「はい?」
す……す——き? って……。
どうやったらその考えに辿り着く?
「イヤイヤイヤ…確かに『隙だらけ』とは言われたことあるけれども〜ってそうじゃないよね、うん。判っております、好き。ただそういうのではないかな、今日も—」
口走って、思い出す。
『まー、綺麗ではねーな』
「今日も、何。何言われたの」
「あ、あー…うん、まぁ、『綺麗ではない』って…。いやっその通りだけどね! 好きだったらそれは言わないと思うんだ!」
「はーーーーーーーー」
突然黒い溜め息を吐き出した善くんに肩を揺らす。
口元の前で手を組んでいた彼は小さく何かをぼやき、それに首を傾げた私に向かって笑顔を見せた。
「まー…、そうね。ごめんなさい。今のはペットを選ぶ時のことを考えて言ってみただけ。男が直感的に好き!って思ったから飼いたくなったのかなって」
「善くん…。ペット説濃厚ジャン…」
そこでお待たせ致しました、の声と共にアイスコーヒーが運ばれて来た。ペットは喜んで尻尾を振り、ストローの袋を切った。
「……」
「キリティー? どうしたの」
「…善くん、あのね、」
恐い。
その通りだ。
この感情に間違いはない。
ただ、
「おじや…」
「は? おじや? おじやがどうしたのよ」
「おじや、が、美味しかった。自分でもよく解らない。恐いのは逢った時から今も変わりないのに、恐いと思ったら脚、怪我してないかとか、寒気がすると思ったら湯たんぽにされていたり、朝起きたらくっさい長ネギ首に巻かれていたり、頭痛薬、用意されていたり」
そう。
それがあるから、
「今日…も。綺麗ではねーなって言われた。言われた、けど、」
煙草吸いに出る、なんて、嘘で。
——…『おまえは外面なんか飾らなくていい』
「私の、入社当時から履き倒してボロボロだった靴、
捨てないで持って帰ってくれたの」
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