第44話

「…………」



もう何日目だか忘れました。朝。


瞼を持ち上げ一番初めに見る光景がとてもこの世のものとは思えない美し〜い人間の顔のどアップだったとしたら、何を思うのが正解だろう?



『わ〜〜ここは天国?癒される!』?



けれどそこに、目を開けたらすぐにでも襲ってくる可能性がある、生命の危険を感じる、というオプションが備わっていたとしたら?



『わ〜〜ここは天国?癒される!』って


思わなくない?



今私、音を立てたらこの怪物起きそうだな、一生眠っていてくれないかな、と思って息を殺してます。


これが正解だよね?




「…キリ」


「!!」



願った側から仰向けに寝返りをうった花山院さんは、眩しいのか目元を手の甲で隠して、低く掠れた声で私を呼びつけた。



黙っていると、目は開けられないまま彼の指先が頭上を指す。それを追う。



「…カーテン閉めろ」



いやじゃ!!



「…カーテン閉めるか早朝から一発俺に犯されるか「ハイッ閉めまーす!」



脅しやがった…



一瞬で布団を飛び出て勢いよくカーテンを閉め、警戒心MAXのまま再び布団の中に潜り、ぶるぶる震えた。



薄暗くなった寝室の中目を見張っているとその目を丸くした花山院さんと目が合う。何だ…?


怖…



「何で戻ったんだよ…」



「え?」


「布団の中。そんなに怯えてんなら出ればいいだろ」



「え、だってまだ朝早いからぬくぬくした」



「ぶは」



言い掛けた途中で、最後まで察したのか花山院さんは噴き出して笑った。


何だか困ったように一頻り笑って、私の方へ身体を向かせた。



「ぬくぬく、する?」

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