第28話

「会社には俺様が云っておく」


「“貸し”な」


「寝てろ」



その三つを言い残して出て行った男。二言目が恐怖だが—玄関のドアが閉まって、鍵を閉められた音でやっと我に返った。


身体は熱いままだが起こされた頭で気付くことがあった。



…私、ブラは…!?


胸元が心許ない。スースーする。


首に巻かれた長ねぎ越しに引っ張った首元から胸元を覗くと、やはりしていない。ナイトブラ必須の民の為、急に落ち着かなくなり起き上がろうとする。と、他にも気が付くことが出始めた。



ブラの前に先ず、これ。Tシャツ。



誰の?



それに記憶を辿ると昨日は確か、スラックスから履き替えたいと思いながら眠りについてしまった筈。で、履き替えてはいる。だがしかしどうしてまた誰のか分からないハーフパンツを履いている?


まさかと思い座ったままお腹からハーフパンツを覗くとそのまさか。



パンツまで昨日の記憶とは別のものを履いていた。


昨日は確か、そう、そうそう、黒。黒いパンツだった。

脱がされかけて履き直した。その時に見たから覚えている。レースに黒地に赤い花柄のパンツ。でも今此処に見えているのは白。どう見ても白だ。変色の疑いもない真っさらな白。純白の白。

あまり履かない。自分で履いたとは思えない。


…いわれのないべそをかきそうになっているのを我慢して、蒼い顔には気付かないふりをしてヨタヨタとベッドを降り、姿見の前へと急ぐ。




「……な、にこれ……」

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