第24話

遠ざかる、裏切り者とドアの閉まる音。急いで靴を脱ぎ捨てた私は頭(ほぼ顔面)を掴まれたまま廊下を引きずられ、あれ、昨日も同じこと起きなかったかなと問いたくなるつまりこの清らかな身はベッドに投げられた。



「きーり」



にゃぁーん。


と、聞こえてきそうなのに。幻聴こそ聞こえないがそう思うくらい男は甘ーく私の名を呼び、自ら着ていた真っ黒なスウェットの中に手を突っ込みながら片脚を乗り上げる。



ふわりと香る匂いが酷くいい匂いで酔いそう。

猫は私でこれはまたたびなのか。何を言っているのだきりしっかり。




「俺以外の男、この家にあげようとしたの?」




昨日と、今朝と、口調が違う。



今の方が必ず優しいのに、恐いのはどうしてだろう。




「ち、ちがいます」


何故弁解みたいなことを!ココは自分の家でしょきりしっかり!2回目だよ!




「ちがう?」



ゆっくりと問われながら美しい顔は近付いてくる。



「ちがうの? まさか。違くないよ」




な?と耳元で囁かれれば嫌でも背筋が震えてきつく閉ざそうとしていた瞼も緩んでしまう。頭で考えるより早く、男が手のひらを自分の肌に滑らせて服を脱ぐ気配がしたため残された少ない本能で服の裾を掴んだ。



「着たままする?」




時が止まった。


止まってくれと願ったのは私かもしれない。


やっと、またしても襲われていたことに気が付く。



「な、で」


「ぁ?」


「強姦、ですか」



声が震えているのが自分でも解った。男は意外にも表情を和らげて、初めて“素”だと思われる笑顔を魅せた。



「だからおまえさ…何で尋くわけ。その好奇欲はいつか身を滅ぼすぞ」



恐いのに、美しいものはそれだけで狡いと思う。

心臓が止まりそうになったのはこの状況の所為なのかそれとも。



「か、身体が目当てですかっ」


逸らせない視線の先で、髪を払い目を細めそれは楽しそうに影を落とした目元のまま、「身体、な。俺の身体が欲しくて堪らなくなるの、おまえの方になるけど」と声を落とした。



そして服を捲るのをやめた指先は、私のスラックスの金具を引っ掻いて外し、中に滑り込んでストッキングの中にまで侵入してきた。


その感覚に暴れるも私の両手首は男の片手で動かないよう押さえつけられていて全く歯が立たない。




「もっと抵抗してみ 全然力入ってねぇな」

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