第2話

ザァ―…



「わ、風邪つよい」




高校二年に進級した春。


窓から入る突風に肩まで揃えた髪を振り回されて、それでも向かいの席で笑っているのは、親友の明子。




「閉めないの?っていうか、あれ?嵐と美枇は?」


「トイレかな?」



そっかと返しながら席に着いたのは、あたし、桜木真実。



あたしには、ちょっとした“特徴”がある。







「ま、真実先輩…!」


「?」



首を傾げるあたしに、明子も一緒になって首を傾けた。それから教室の出入り口の方を見る。



「あたし?」



自分を指差して問うと、そこに立っていた女子生徒は力強く頭を縦に振る。




「っは、はい……!」






教室から廊下に出ると、なんとも初々しい一年生があたしを待ち構えていた。



「え、えと…。あの、そのう」



「ん?」




もじもじと目を泳がせていた一年生はキュッと目を瞑って、あたしに後ろで隠していた何かを差し出した。




「入学式!先輩見て、憧れました…。よ、よかったら食べてください…!」



「……」




う。


うわああああ…。



可愛い!




目を瞑って、僅かに震えながら差し出されたそれは、可愛らしくラッピングされたクッキーだった。

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