第13話

「!」



あたしはポケットに手を入れたままで、ハルに寄り掛かる。


そうしたらなんだか急に、感動してじんわりと涙が零れそうになってしまった。




だって。


ハル、冷たいなんてうそ。


ハルのほっぺの方が冷たかったよ。



いつから待ってたの?



バイト終わる時間知らなかったはずなのに。



どうしてハルはいつもこんなにあったかいんだろう。


…って。





「ハル」


「はい」



ハルはまだあたしを大切そうに抱きしめている。




「ハルの方が寒かったでしょ」


「ううん。俺風邪引かないから平気」




…ほら。



やっぱり風邪のこと気にしてたんだ。




「ハル」


「何?」



「もうあったかいよ」


あたしはハルの肩で微笑んだ。




「……あったかいの、めぐだろ。めぐはどうしていつもこんなにあったかいんだろうな」



「……、」




ずっ


「?……!……めぐ、どうし…」



赤い鼻と頬のハルは手を離して、涙ぐむあたしの顔を見て、困惑した表情を浮かべる。




「ハルがあったかいから」



あたしは涙を拭いながら、鼻声でうははと笑った。




「あー…。ったく」


ハルは呆れた表情で視線を下に置いて、またあたしをじっと見つめた。



「めぐが可愛から、手、離し難い」


「だめ。鼻かみたいもん、あたし」


「ちぇ」



「へへ」















Fin.

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