ハル=ツン馬鹿

1頭

第1話

帰り道。

ハルが捕まえた蟻を潰すくらい、あたしに向かって怒鳴った。


しかも内容は小学生レベル。




ハルは、イケメンと言われるのが大嫌いなのである。




もう一度言おう。

捕まえた蟻を潰すくらい。



「おいババァ!謝れ!」


「ごめんなさい…」


「ゆーるさーないー!」


そう言って、ケラケラと声を立てて笑う。



「あはは…」


よかった機嫌直って。




脳ミソは小学生のまま、図体だけ大きく成長したハル。


別に普段はかなり普通なのである。

ただ、イケメン類の話が出るとすぐに馬鹿に。


あたしに槍を刺す勢いで突っ掛ってくる。


怖い…。





「あっつー!」

そして今は暑い夏。


「ね、ハル、寄り道して行こうよ」


「んー、まあ良いけど」

ハルはポロシャツをパタパタやりながら言う。




ちなみにあたしたちは、決して付き合っているカップルではない。


でも、あたしはハルが好き。

も、勿論恋愛対象として。


だからこうして偶然を装って、一人昇降口から出てきたハルと帰るのだ。




「あー、蟻潰しちゃったから手洗いたいな」



馬鹿でも、好きだ。





――…

―…


ファーストフード店に入ると、涼しい風が一気に流れ込む。



「うあー涼しい」

風に吹かれて嬉しそうなハルが可愛い。



「やっぱちょっと込んでるねー」


「あ、じゃあ俺席取っておくから適当に頼むわ」

「ん」



うう…。

こう見えてハルは気が利くし、効率よくこなすのが上手だと思う。



あたしは飲み物だけ頼んで、ニ階へと消えたハルを探した。



「めぐー!ここ、ここ」


「お」


一番端の方の席から、手を振るハル。

こっちに寄って来る。



「貸して、俺が持つ」


「!」


そんな小さな男らしさを見せるハルに、あたしは赤面してしまう。


ハルの後ろを着いて行くと、心なしか周りの女子高生がハルのことを見ている気がする。


あたしの考え過ぎかもしれない、けれど。

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