第19話
「あ、」
喋れるかの問いに応えようとして、慌てて一番始めの文字を言葉にする。
何故か、くちびるのさきが震えた。
男の人は何も言わないで、床に視線を落とす。
それから手を、差し出した。
びく、と肩を震わせてしまったあたしを見て、瞬時に酷く傷付いたような表情を浮かべた。
突発的にしまったと思って、眉を下げてしまうあたしは馬鹿すぎる。
彼の手は、本当は。
震えていたのに。
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