第8話
主はまだ夢の中にいるのかもしれない。
古い―…和式の玄関だった。端っこに爪を引っ掛け、息を吸い込み左に引く、大きく、
鈍重な扉。
過去も何かが逃げゆくことを赦さない扉は、こんなカタチをしていた筈だと、その時あたしは無意識下で思っていた。
音は外ではなく、玄関から続く奥へと向かって響いて行く。まるであたしから遠ざかって這い蹲って逃げていくように。
身震いするような僅かな風が背中を撫で、駆け抜ける。
「……。」
口は、噤む。
今の大きな音に返事も反応もないということは、声を出しても同じことだと思った。
それから少し、恐かった。
薄暗い屋敷の中はずっと呼んでいた。待っていた。
誰かを。
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