第63話
「レオ」
「はい主」
「済まぬ。まだ…目があまり利かない」
私と従者のレオは、あるひとつの浮かれた城を目の前にした草むらで、世界で最も大きく、偉大な城の主らしからぬ行動を、膝を抱えて座るという行動をしていた。
レオは腰まである銀髪の長い髪をサラリと揺らして顔を顰める。私はそれに気づかぬフリをして、そんな表情(かお)をするなと心の中で思う。
「主。この国の、姫を攫い人質にするくらいでしたら手っ取り早く殺めてしまった方が「レオ!!」
声を強めるとパキ、とレオの足元の小枝は虚しく音を立てて折れた。
「……お前が……それを言うな」
「なぜ――」
言い掛けたレオは私を見て口を噤む。
「…今すぐ城へ戻りましょう」
「煩い」
「あまり利いていないどころか殆ど見えていないでしょう。体調が優れないのならどうして私の“仕事”についてきたのですか」
「はっ…ついてきた?誰に向かって口を利いている」
レオの方は見ずに答える。と、立ち上がったレオは私の腕を引き、抱き上げ無理矢理城へ足を向けた。
弱い抵抗と小言の中で薄れる意識。
恐らく城に着いてからだろう、広く広く冷たいベッドに重く、同じように冷めた掛布団を掛けられながら聞こえてくる声があった。
「…貴方の優しさは、判り難い」
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