第58話

そう告げた後、回した腕で恐る恐る傷に触れた。





これが過去に自分が付けた傷だと思い知る。





「此処には二翼の翼が生えていた。急所だったから、斬り堕としたんだ…二度と飛べないように」






彼女が天国(そら)へ、逝けないように。






腕を奪うよりも、脚を奪うよりも、心臓を奪うよりも。最も残酷なことをした。彼女にとって唯一の彼女であることの証明を斬り堕としたのだから。そうしないと、そのくらいしなかったら、彼女は、――…どうしたのだろう。

















「―めんな、グロリア」

















肺が潰れたような声で呼ばれた。



グロリア……?





わた、し……?





それはいつかのゲームの中、彼が“ 魔王 ”に付けていた――――名前。

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