第13話
「“親友”って凄いですね」
「え」
思わぬ方向から寄せられた呟きに、耳を占領される。
「丁度この前竹永さんと映画を観た時、――竹永さん、動物ものは泣くけど恋愛ものは一切泣かないっていうじゃないですか――恋愛ものだったんですけど、泣きそうになる感覚はあると言っていて、そういう話になったばかりだったので」
そう。
竹永さんこと育美と号泣すると話題の恋愛ものの映画を観に行っても、割と帰りのカラオケの方が盛り上がったりする。
「その時言ってました。何かを見たりして泣きたくなるような気持ちがあるとき、それは前世に関係があることなんだって」
「……いくみ、たまにそういう夢のある可愛いこと言い出すよね」
「はい。僕もそう思いました。その後思わず『サンタクロースは何処にいるんだろう、今頃何をしているんだろう』と呟いたら、『もみじの紅を見て、ああ、早く赤が着たいなって思ってる』と言われました」
「あああ可愛いーーっ!!」
「はい。僕はその夜胸が苦しくて夕飯が入りませんでした」
「ごちそうさまです、ごちそうさまです」
ファミリーレストランの端っこ席、二人して拍手喝采。
今頃育美はくしゃみでもしていることだろう。ああ可愛い。
真っ直ぐ、その漆黒の視線を上げた松方くんはいつの間にか綺麗に食べ終えていた後のお皿をテーブルの端へ避け、聞こえの良い低音を口にした。
「実際あまりそういう“類”のものは信じませんが、竹永さんのことは信じているので彼女が言うならそれ、俺は本当だと思います――」
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