undecide
第5話
俺はゲームが好きで――特にRPGの類が好きで、昔からクリスマスには必ずといっていいほど新しいゲームを与えてもらっていた。
今年5歳になる弟2はどこで覚えてきたのか、最近『全クリ』という単語を覚えたらしく、何でもいいからそれを口にしたいらしく、兄を見つける度『こーちゃん全クリした?』などと聞いてくる。
因みに、ゲームをやっていない時も聞いてくる。
兄が湯船に浸かっていようが歯を磨いていようが、トイレに入っていようが聞いてくる。
寝ているときも瞼をこじ開けてまで、自分の聞きたいときに聞いてくる。大体朝5時が多い。
何故なら奴は奴の世界を成形しているであろう、愛する戦隊ものを観るため異常な早起きをするからだ。
5歳児にして、何という計画的嫌がらせという名の日課だ?それは恐ろしい武器だ。
それと、もうお気付きだろうがかなりのしつこさであり、RPGでいうところの雑魚モンスターだ。倒しても倒しても同じ顔の奴が出てくる。末恐ろしい。
「こーちゃん全クリした!?」
そろそろマイブームにも飽きが訪れたのか、なかなか鬼気迫った怖い顔で早口に聞いてきた夜前。
それでもわざわざ二階にある兄の部屋を開けて言いにくるあたり、ブーム早く終われ。
「まだしてないよ、全クリ」
そう答えると、兄が好むゲームを“全クリ”していないことの何がそんなに面白いのか、弟2はゲラゲラと笑って俺を指さした。
「……」
手招きでテレビの前に掻いていた胡坐の傍へ寄せ、捕まえて脇腹を擽る。
より一層大きくなったゲラゲラが第一の弟を誘き寄せた。
二階トイレの方角からドタドタと今年8歳の足音が聞こえてくる。
ゲラゲラがドタドタを呼んだのだ。あー。めん。
「アッ!おいおいずりーな!!おれもくすぐれよこーちゃん!!」
廊下から覗かせたその顔の意味がわからない。
から、誘き寄せて擽ってやったら、雑魚モンスターたちは喜んで倒れた。
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