お試し 練習用
ややハル
第1話
雲ひとつない良い天気。
今日は千日目の記念日。一日も休まず続けた俺の日課。
飼い犬の散歩だ。
犬の名前はポチタロウ。
犬種はハーフ犬、チワックス。
チワワとダックスフンドの雑種だ。
俺が、一日で唯一家から外出する時間が犬の散歩。
俺の住んでいる家は都市部郊外にある一軒家。
父親が俺が子供の頃に購入した在宅地の建て売りの家。
普通の家。父、母、弟、犬、俺の四人と一匹家族。
最近、弟が家から出て独立した。
この普通の家に住む普通の家族で
普通ではないのが俺だ。
俺の名前は平良只仁(タイラ タダヒト)。
子供部屋おじさんをしている。
いわゆる引きこもりだ。
中学卒業後、高校に入学してすぐ不登校。
もともと勉強も運動も出来ない駄目人間だ。
友達もいない。夢も人生の目標も無い。
自分の部屋から出なくなった。俺の時間は止まった。
しかし当然、時間そのものが止まる事はない。
ゲームやマンガで時間を潰す日々。
体調の良い日はゲームを徹夜でやりまくる。
ゲームをしてマンガを読みアニメ鑑賞をする。
AVも見まくる。
そして、よく観ていたAV女優の引退が続く。
AV女優より俺の方が年上になっていた。
いつのまにかいい年齢になっていた。
どうしようない人生だ。
これを人生を詰んでいると言うのだろう。
人生詰む、嫌な響きだ。
危機感を持っていた家族も何も言わなくなっていた。
何をするにもやる気が出ず毎日、虚無感しかない。
一日中、寝て過ごすことが多くなった。
三年程前、ある日、親から何か欲しい物がないか?
と聞かれて、特にこれと言った物はなかったがなんとなく犬が欲しいと答えると、
二週間後ぐらいに親がチワックスを連れてきた。
ポチタロウとの出会いである。
チワワとダックスフンドのハーフ犬だ。
子供の頃から犬は飼いたいと思っていたので嬉しかった。
それから家の外に人が少ない時間帯にポチタロウと散歩をする様になる。
やはり外に出るのは良い事だ。
ポチタロウがいなかったら家の外に出る事はなかったと思う。
今日はポチタロウとの連続千日散歩記念日、ポチタロウといつものコースを歩きだす。
ポチタロウもいつも通りのニコニコ笑顔で元気だ。
天気の良い日も雨が降る日も雪の日も
休まずポチタロウと歩いたこの千日。
なんとなくやり遂げたという充実感がある。
散歩コースを半分程、歩いた時、
何か違和感の様な物を感じ立ち止まってみると、
意識が一瞬途切れた。
目がボヤける。よく見えない。
体も動きにくい。なんか変だ。
なんだかカビ臭い気がする。
なんだ、どこだここ?俺はどうなったんだ?
ポチタロウは?これはいったい?
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