第十七話 協力できるっ!?
「で、ワオン。どこを探すんだ?」
「確かに!」
「『確かに!』じゃないだろう! 探すと言ったのは、ワオンだろっ!」
歩翔君に怒られた。私が言い出したんじゃないのにー! ミューちゃん……助けて――!
「怒らないで、でつっ…」
ミューちゃんが両目に涙を溜める。ミュ、ミューちゃん泣かないで!?
「ミューちゃん、大丈夫だよっ。この人は…アルトは、口が悪いだけだから……」
「はあ!? なんて言った!?」
「うわ―――っ」
「ひょえ――――っ!」
ミューちゃんを慰めようと思ったけど、怒られちゃった! 赤鬼みたいに怒ってる。
こんな時、ナギがいれば……アルトを止めてくれたのに。考えただけで、心が鉄よりもっと重くなった。
「えっ!?」
アルトがいきなり間抜けな声を出した。いつもツンツンしているアルトから想像できない…。
そう思っていたけどアルトが誰かに手を引っ張れ、ずりずり遠くへ行く! いきなりすぎるよっ、どうしようっ。
と言うか、誰がアルトを連れて行ったの!? どんどんアルトの姿が私の目から離れて行く。とにかく、すぐに追いかけなきゃ!私とミューちゃんは、急いで駆けだした。
〇┃⌒〇┃⌒
「はぁっはぁっ」
アルトが引きずられなくなったのは、空き教室に入った時だった。
「痛い……」
アルトが呟く。長袖とズボンの制服のせいで怪我が分からないけど、長――い距離だったからずりずりされて痛くないはずが、無い!
「これぞ、肉汁を飲む! 肉汁っておいしいけどね。ハンバーグの残った汁を飲むの好きなのに、昔の人は嫌いだったのかなぁ…」
「ワオンちゃんっ、それを言うのなら苦汁を飲む、でつ! しかも意味が違うでつよ~」
ふーん、と声を出そうとしたけどそれが出来なかった。
だって、アルトを引きずった男性に怖―い目線で見られたから! うう、歩翔君並に怖い!
…えっ!? 見た目が独特すぎるよっ。
「すごいでつ…」
白い服を着て白い羽が生えている! 今まで見た中で一番衝撃的な見た目。こんな見た目、人間じゃない、確実に邪楽だ。
う――ん? あれ? 今日はハロウィンじゃないよね? コスプレ大会があるのかも? 確実じゃないかも…。
「早くっ、ナギを…呼んできてくれっ!」
アルトはもう邪楽だと、思っている。だから倒すために、ナギを呼んでほしいんだ。三人でいないと邪楽は倒せない、それは知っている。
でも…………ナギと話しかけ無いって約束した。ナギは私のことを、本当に許していないかもしれない。どうしよう……。
「早くっ! 俺が…」
「アルト君はミューが見ておくでつ! 大丈夫じぇつ、きっとナギちゃん分かってくれるでつっ」
ミューちゃんの声に背中を押され、私は最初の一歩を踏み出した。ナギがいる場所に向かうため。
〇┃⌒〇┃⌒
下駄箱の前に着いた。
まだナギの靴は下駄箱に入っている。学校にはいるはずだよね………。
冷静すぎる! 私はここで待つことにした。捕らわれている歩翔君には申し訳ないけど。
「はぁ……」
ため息にもならない言葉が口からこぼれる。
ナギと私とアルトでファイト―ン。音楽を守る、お役目。そんな大事な役目があるのに…仲間割れしてるんだ……。
私達、協力出来てない……。どうしよう、ファイト―ンとして、失格……? 心から不安があふれ出る。
「えっ! ワオンちゃん…」
「ナギっ!」
「ど、どうしたの?」
私の姿を見てナギは作り笑いをする。
やっぱり…話をしたくないんだ。
「話しかけてほしくないのは分かってる。でも、今だけなの! お願い! 今日のダンスの授業であった、音楽が鳴らない事件。あれは邪楽のせいっ。今、その邪楽にアルトが捕まってるんだ!」
「え…アル君が……」
私が、ゆっくりとうなずく。
「…………分かった。行く」
〇┃⌒〇┃⌒
「アル君……! ど、どうして…捕まってるの?」
「ナギ、来てくれたのか。感謝する。まあ、捕まったのはたまたまだ」
アルトは邪楽に手首を押さえつけられているまま、ナギの方に首をひねった。手首には、少し痣が出来ている。
「なぎの仲間を傷つけて……許せへん!」
ナギが決意したように、瞳を熱くする。今までで見たことが無いぐらい、ナギは燃えている。
ブレスレットを押し、トライアングルを鳴らした。
――リリリ――ンッ
すると、アルトを六角形の箱が包み込んだ。ギリギリ邪楽は六角形の箱に入っている。
ナギはアルトを覆っている箱を引っ張って、邪楽から離れさせた! すごい! 私もファイト―ンとして、しっかり役目を遂げないとっ!
――タンタンッ
タンバリンから網が出て、邪楽を包んだ。よし、動けなくなったぞ!
「早く曲を当てるでつっ!」
このコスプレしているおじさんの姿から、どう考えろって!?
お祭りの曲、とかなの? う――ん、何か白い翼が生えてるよね…うーんっ。
「天使、みたいな感じか? 輪っかはついてないが、有り得ると思う」
「え――――? 『天国と地獄』と被るから、無い気がする」
「そうか………」
あれっ、アルトが反発しなかった。いつもなら適当に言うな、とか言われそうなのに…アルト成長したねぇ………。
って考えてる場合じゃない! 天使じゃないなら、何?
白い翼が生えてるなんて、天使しか考えられないよ………。アルトに違うって言ったけど、もしかしたら天使かも。
「白い羽、と白い服以外にヒントは無いんやろか…」
「白以外のヒント…難しいでつね………」
白ってナギの好きな色。それは関係無いか………。
見た目にヒントがあるのかなぁ。
そう思って、後ろに回ってみる。あ………、倒れている足を見て、私は大ヒントを見つけた。
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