模型戦士マサハル

木船田ヒロマル

第1話 ジャッカルの日

「ええっ!?ジャッカルプラモデル部!?」


 家電量販店ジャッカル芦高あしだか店の事務所に、オレのドタバタ日常系アニメの導入のような叫びが響き渡った。


「ええ、メンバーを募集してるみたいですよ。宝田さんにぴったりじゃないですか」

「確認します」

 先輩社員の荒木原さんにうながさされメールを見るとそこには確かに家電量販店ジャッカルプラモデル部の発足ほっそくと、そのメンバー募集とを伝える内容が書かれていた。しかもどっかの店舗の有志とかじゃねえ。本社発信の社内プロジェクトの様相だ。こいつはえれえことになったぜ。参加するっきゃねえ!


 しかし──


「……若干名じゃっかんめい

 オレは声に出してそう呟いた。

 希望者全員じゃないのか。

 まあ確かに我らが家電量販店ジャッカルはチェーンを全国展開する中々の大所帯。玩具もホビーも扱いがあるからスキモノは一定数以上いるだろう。誰もかれもってわけには行かねえってことか。

 活動は今の所、店舗ディスプレイに展示するサンプルの制作、ゆくゆくはプラモ制作体験会などのイベントの企画等の予定……ただしあくまで課外活動なので、本業を優先とし公私混同することのなきよう──まあそりゃそうか。


 希望者から若干名を選抜する……選抜の方法は……


「書類審査……か」


 メールによれば、規定のフォームに作成した模型の写真を添付、志望動機を記載し、メールにてプラモデル部部長である本社マーチャンダイズ部の神原さんに返信、締め切りは今月末──。


 へっ、面白え。

 運のいいことに今日は早番で5時上がりだ。

 iPhoneには模型の写真なら唸るほどある。家族の写真より多いくらいだ。

 辛い時に「ガンプラ」と3回呟つぶやいて気持ちの応急処置をするほど模型を愛するこのオレが入らないなんて、ジャッカルプラモデル部に取って大きな損失。

 退勤切ると同時に志望動機とやらを書き上げて、最速で入部届けを叩きつけてやるぜ!!!



*** つづく ***

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