14.初陣

 開会式から一週間後の土曜日。

 私たちはみなとみらいにある開会式会場と同じイベントホールへ改めて訪れていた。

 そのなかにある会議室の一つに「相模原女子 対 由比ヶ浜女子」と記載された紙が張り出されている。


 中に入ると部屋の端と端で向かい合うように設置された複数のゲーミングパソコンがあり、大会運営スタッフと思われる大人の方々が機材のチェックなどを行っていた。


「一回戦なのにオフラインって豪華な感じがしますね!」

「まぁ不正を防ぐにはこれしかないしからね」


 琴崎先輩の言うように、オンラインでの対戦はチートツールなどの不正行為を防止するのが難しく、不正プログラムの使用、第三者からの助言、対戦相手の情報の取得など、懸念すべきことは多い。

 しかし、運営が用意した場所と機材で選手に対戦してもらえば、それらの問題は一気に解消できる。

 その言葉に南先輩も頷いた。


「ココ助も身バレしないように別室でやるみたいだし、徹底してるよほんと」


 Vtuber清流こころとして出場するココ助先輩は、この場に姿を現すと身バレしてしまうので別室での参加となる。

 この特別対応は運営にとって負担になるだろうが、広告塔として活動してもらえるので相応のメリットはあるのだろう。


「部長! わたしがやりますから!」

「えー、自分でできるのに……」


 私たちが運営スタッフから説明を聞きながら機材の準備をしていると、対戦相手である相模原女子の五人がやってきた。

 部長と呼ばれる後ろ髪を三つ編みで結んだ優し気なお姉さんは、相模原女子で唯一の三年生である小清水選手だろう。


 相模原女子は第一回大会で全国出場した古豪。

 だがそれは十数年前の話で、近年は1~2回戦敗退を繰り返すチームとなっている。


 選手構成は三年生部長の小清水選手がIGLを務めていて、他は全員二年生といった具合だ。

 ゲーム内ランクも小清水部長含む二名がハンターで他がダイヤとプラチナなので、私たちよりも格下と言える相手だろう。


「あっちゃん。最後になるかもしれないんだから少しぐらいやらせてよぉ」

「縁起でもそんなこと言わないでくださいよ部長!」


 対面の席からはひっきりなしに部長!部長!という声が聞こえてくる。

 小清水さんが愛されていることが伝わってくるが、私はその一言に気を取られていた。


――そうか。どっちかの大会がここで終わるんだ……。


 eスポーツは一年を通してさまざまなイベントがあるが、高校生の全国大会と呼ばれるものはこれしかない。

 ココ助先輩にとってもこれが最後の全国大会となるのだろう。

 そう思うと、なんだか急に恐ろしくなってきた。


「あかちゃん機材は大丈夫?」

「だ、大丈夫です……」


 宮本さんが私の顔を覗き込むように聞いてくる。

 自分で勝手に不安になっただけだ。

 試合前にネガティブな気持ちを周りに見せるわけにはいかない。


――大丈夫。勝つためにたくさん準備してきた。きっと通用する。


 両チームのセッティングが終わると、運営と両校の代表が集まってマップの順番や攻守を決定していく。

 中の見えない箱の中からカラーボールを取り出すランダム形式だ。

 こちらの代表は琴崎先輩が向かい、相模原女子からは小清水さんが進み出た。

 それらが決定すると、運営スタッフが両校の代表へ注意事項を伝える。


「この試合は配信試合となります。対戦後にはそれぞれインタビューがありますので、両者ともに各高校を代表する学生として自覚を持った対応をお願いします」

「「はい!」」


 運営スタッフが両校の代表へ説明を終えると、琴崎先輩が私たちの元へと戻ってくる。

 私たちの一回戦が始まった。





『ごめん一人中央抜けた! スポーンからB行ってるかも!』


 ココ助先輩の声がヘッドセット内に響く。3-5で迎えたディフェダーサイドの最終第九ラウンド、私たちは劣勢に立たされていた。


「すみませんやられました! 別の三人がAにドライで来てて、もう爆弾設置に入ってます!」


 Aエリアを守っていた宮本さんからも報告が入る。中央からの報告に気を取られた隙にやられたのだろう。そして、そのまま人数差で押し切られてこのラウンドも落としてしまう。ディフェンスラウンドは3-6で折り返しとなってしまった。


――まずい……。勝たないといけないのに。


 ゲームランクで見れば格下の相手だ。なのに勝ち切れないどころか窮地に立たされている。当然、その原因はIGLを任されている私だ。毎ラウンドで全体的な作戦指示をしているが、相手との動きが噛み合わない。


「3-6は全然あるよ! アタッカーサイドの1ラウンド目集中していこ!」


 琴崎先輩はまだ逆転の目はあるとチームを鼓舞する。

 攻めと守りでゲームの流れがガラリと変わるので、2-7程度の差であれば逆転するのはよくあることだ。

 けれど、その流れはIGLである自分の采配でしか変えることはできない。

 焦燥感が募ってくる。


「ええと、相手の攻めは中央エリアの情報を取ってくる傾向にあるので、最初は詰め待ちしましょう……」

「わかりました!」

『おっけー』

「了解!」


 私の言葉にみんなが返事をしてくれる。

 アタッカーサイドに変わってからの大事な一本目だ。

 ここで流れを取り戻さなければいけない。


 しかし、敵が仕掛けてくると読んだものの、中央エリアには一向にアクションがない。

 このままでは貴重な時間だけが削れていく。


「お、オーソドックスに守ってそうなのでAエリア側にアクション起こしましょう……。あ、相手の返し次第で進行する感じで……」

「おっけ、Aに向かう……って、あぁ!」


 私がAエリアへ進行する指示を出した瞬間に中央から敵が出てきてしまい、南先輩が倒されてしまった。急いで撃ち返すが敵はすぐに逃げていく。


「す、すみません……。こ、こっちの動きバレたのでAはフェイクにしてB本命で……。ココ助先輩は単独でAに行ってスキル吐いてからこっちに合流お願いします……」

『おっけーおっけー』


 相手にこちらの位置情報が伝わってしまったので、なるべくこちらの動きを読まれないようにフェイクを仕掛けながら動きたい。


『Aにスキル入れたよ!』

「び、Bにエントリーしましょう。ココ助先輩は中央通る敵を狩れるように寄ってきてください」

『おっけー』


 もう爆弾設置の制限時間まで猶予もない。

 Aにフェイクを仕掛けたので、このままBに突入するしかない。


 だが、私たちがBエリアに突入すると四人もの敵が待ち構えていた。

 三人ではそれを突破することができずにラウンドを落としてしまう。

 これで3-7だ。


「ドンマイドンマイ! ちょっと噛み合っちゃっただけだから! 次は取るよ!」


 鼓舞してくれている琴崎先輩の声を聞くたびに胸が苦しくなる。

 そして、ヘッドセットをしているので声は聞こえないが、対面には喜び合っている相模原女子の様子が目に入った。


――勝たなきゃ勝たなきゃ勝たなきゃ。じゃないと、ココ助先輩の最初で最後の全国大会が終わっちゃう。


 これが一発勝負の緊張感なのか、地に足がついていないようなふわふわしているような感じがする。やることなすことが裏目に出て、こっちのほうがランクは上なのに勝ち切れない。


<由比ヶ浜女子タイムアウト ~残り180秒~>


 不意に固まる画面。途切れる思考。一体何が起こったのか分からなくて呆然としてしまう。


――……あっ、タイムアウトか!


 『タイムアウト』は各チームが一試合でたった一度だけ使える作戦タイムだ。ラウンド間に選手から申請して、一時中断することができる。


「ひゃうっ!」


 突然、マウスを持つ右手にそっと手が添えられて素っ頓狂な声が出てしまった。手を添えたのは右隣にいる宮本さんだ。長くてすらっとしたきれいな指に思わずどきりとしてしまう。


「あかちゃん。落ち着いて、もっとゆっくりいこ」


 いつものハキハキとした勢いのある言葉ではなく、ゆっくりと語り掛けるような言葉遣いに私は目を見張る。

 周りを見渡せば、南先輩も琴崎先輩も私のほうをじっと見つめていた。


「声に自信を感じない! 遠慮しないでもっときびきび指示出ししなさい!」


 左隣にいる琴崎先輩からべしっと肩を叩かれる。

 確かにいつもと比べて声が出てなかったかもしれない。


「表情硬いよ。ゲームなんだからもっと楽しんでいかなきゃ」


 南先輩がおどけたように笑いかけてくれる。思い返せば勝つことに必死になって、ゲームを楽しむ気持ちはどこかへいってしまっていた。けれど、これはココ助先輩の最初で最後の全国大会だ。一回戦で負けるなんてありえない。自分の手で終わらせたくない。そんなのは絶対に嫌だ。


『あかちゃん』


 ココ助先輩のきれいな声がヘッドセット内に響く。

 この声を聞くのがこの試合で最後になってしまいそうな気がして、恐怖心が掻き立てられる。


『スナイパー持ってみてもいい?』

「……はぁ? 練習してましたっけ? マジでなに言ってるんすか?」


 まったく予想していなかった問いかけに私は反射的に噛みついてしまっていて、口から出してしまった言葉をすぐに後悔する。

 頭から血の気がさーっと引いていくのを感じた。


『それそれ! それぐらいの勢いでオーダーしていこうよ! めっちゃいいよ今の!』


 私はすぐに「ごめんなさいっ!」と口にしようとするが、周囲の反応は私の心境とは大きく違ったものだった。


「新堂さんのIGLがキレッキレのときはいつもこんな感じだよね」

「鬼の顔でビシバシに指示出してますよね!」


 琴崎先輩も宮本さんも、その言葉に乗っかるように笑っている。というか流石にそれは誇張していると思う。多少気が強くなってしまうこともあるが、そこまでではないはずだ。きっと茶化して空気を良くしようとしているだけに違いない。


「そんなことないですよね……?」


 私はいつも助けてくれる南先輩に顔を向けるが、なんだかとても微妙な顔をしている。

 南先輩は誤魔化すようにきれいな茶髪をかき上げながら口を開いた。


「……私はそういうあかちゃんも大好きだよ」

「否定してくれないんですか⁉」


 南先輩の優しさがシンプルに辛い。

 そんなことをしていると、琴崎先輩が手を叩きながら「ほら! 次のラウンド始まるよ!」と意識を切り替えるよう促す。

 もう次のラウンドが始まる時間だ。


――うわー、次のこと何も考えれてないよ……。


 ラウンド間の時間で次の作戦について話し合うのが通常だが、今回はそれができなかった。

 私が「うーん次は……」と口ごもっていると、宮本さんが元気な声で「ラッシュでもいいよ!」と提案する。


 確かにここから話し合ったりしている時間はない。

 そして、まだ攻めの2ラウンド目なので相手の動きにもこれといった傾向があるわけでもない。

 考えるだけ無駄だろう。


「そうですね。このまま手早くラッシュしちゃいましょう」


 ラッシュはラウンド開始からエリア内にスキルを入れて突撃するだけなので簡単だ。

 私は頭をからっぽにしてスモークを出し、ココ助先輩がフラッシュを入れて突撃し、待ち構えていた敵と撃ちあう。


――あれ?


 その銃撃戦はあっけなく勝利した。

 何の苦労もなく、シンプルな作戦だけでラウンドを取得することができた。


『おっけーないすぅ!』

「いつも通りな感じでやれたね!」


――難しく考えすぎてた?


 その後は少し考え方を改めて、シンプルなシンプルな作戦を立て続けに敢行していく。

 そのどれもこれもがそれなりに上手くいき、次々とラウンドを取得していくことができた。


「ギャル先輩の解除遅延がえぐいっすね!」

「定点だけは勉強してきてるからね」


 爆弾を設置後、敵が解除しようとしているところに南先輩の毒爆弾が降り注ぐ。

 この解除遅延がシンプルながらとても強い。

 これで8-7。逆転だ。


――IGLで勝とうとするんじゃなくて、もっとみんなの力を発揮できるように指示を出さなきゃいけなかった……?


 私は心の中で反省する。

 対戦相手の相模原女子と知恵比べをしてしまっては、運や噛み合いでラウンドを落とすこともありえる。

 けれど、純粋な力比べなら負けない。

 もっともっとみんなの強みを全面に押し付けていくべきだったのかもしれない。


 私たちはそのまま横綱相撲で押し切って、一マップ目を勝利することができた。





 三本先取の2マップ目、私たちは一マップ目で逆転した勢いのまま圧倒的にリードしていた。


「相手まだ解除してない! ドンピドンピ!」

「もう定点ボムないよ!」


 しかし、毎ラウンドがすべて時間ギリギリの勝負になる。

 相模原女子の最後まで粘り通すような戦いに執念を感じる。


「宮本ナイス! いやーギリギリ」

『相手割り切りで解除しないで倒しにきてたね』


 そして私たちが勝利にリーチをかけた9-2の第12ラウンド目。

 敵を挟撃して戦線を崩壊させたところで、逃げる相模原女子を追い立てる。

 命からがら逃げ続けている最後の一人はマップを必死に駆けまわりながらなんとか巻き返そうとしているが、私たちが一つ一つエリアを潰しながら追い込むことで次第に安全地帯がなくなっていく。


 そして逃げた先に回り込んでいた私は、通路から飛び出してきた最後の一人を撃ちぬいた。


「一回戦突破だぁー!」

「GGナイス!」


 みんなが一回戦突破の喜びを分かち合っている。

 しかし、私の目に映るのは対面にいる相模原女子の面々だ。

 勝敗が決すると同時に口に手を当てて泣き崩れる二年生たち。

 その姿を見ると胸が締め付けられるような気持ちになる。


――私がああなっていたかもしれない。


 たまたま私たちが勝つことができただけで、どちらも先輩の最後の全国大会を背負っているという意味では同じ立場だ。

 けれど、部長の小清水さんは落ち着いた様子で微笑んでいた。


「~~勝利した由比ヶ浜女子 清流こころさんのインタビューでした!」


 私がぼーっとしている間に対戦後のインタビューは終わっていたようで、私ははっと我に返る。

 次の対戦もあるのですぐに会場を開けなければならない。


「ほらそんなに泣かないの。あっちゃんは明日から部長さんなんだから」

「ぶちょぉぉおお~!」


 それに負かした対戦相手の姿を目に入れたくない。

 私はこの場からすぐにでも逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。


「あの! 対戦、ありがとうございました!」


 宮本さんの元気な声に肌が粟立あわだった。

 私は信じられないものを見るような目で、わざわざ対戦相手へと声を掛けた宮本さんのほうを見る。

 負かした相手に掛ける言葉などないというのに、相手の神経を逆撫でするような結果になってしまったら大変だ。

 煽りと取られてもおかしくない。


「うん、こちらこそ! 確か宮本さん……だよね? ランクはゴールドなんでしょ? そう思えないぐらいエイム良かったよ。撃ち合いめっちゃ強くてびっくりした!」

「ありがとうございます! けど四月に始めたばかりなので立ち回りは全然で……」

「四月に始めてそれなの⁉ 超逸材じゃん!」


 けれど、相模原女子の小清水部長は宮本さんと笑顔で会話している。

 私にはそれが信じられなくて思わず目を見張った。

 その視線に気づいたのか、小清水さんは私にも優しく微笑む。


「新堂さんも一年生でしょ? 対戦校が決まってランク見たときびっくりしたよ。最高ランクにアニマルズってあるんだもん」


「あ、えっと、はい……」


 どうして自分のチームを負かした相手に対して、こんなにも穏やかに話すことができるのだろうか。

 悔しくはないのだろうか。純粋な疑問だった。


「このチームでやれるのは最後なのに、なんでそんなに穏やかでいられるんですか……」


 気づけば、その疑問を口にしてしまっていた。大失態だ。

 私はやってしまったと頭を抱えて「すみませんっ!」としゃがみこむが、当然、相模原女子の一人が目を吊り上げてくる。


「何だお前! 喧嘩売ってんのかぁ⁉」


 しかし、問われた本人である小清水さんは、私に対して怒るでも、部員をなだめるでもなく、納得感のある顔で声を弾ませた。


「いや、ほんとそれなんだよね!」


 「え?」と驚いたのは私も相模原女子の生徒も同じだ。

 小清水さんは腕を組んでしみじみと語る。


「勝ち負けってそこまで重要じゃないっていうか……。いや、そりゃ勝ちたくないわけじゃないよ? これまで勝つために必死で練習してきたわけだし。このチームでもっとゲームしたかったって今でも思ってるし。けど、負けたからどうこうってことでもなくて……。あれ、なんか矛盾してる? 」

『それすごく分かります!』


 後ろのほうからココ助先輩の声が聞こえてくる。ココ助先輩は南先輩にモニターの向きを合わせるようお願いして、小清水さんとモニター越しで対面した。


『私も最後の大会なので同じ立場なんですけど、この結果が本質じゃないっていうか、これまでの過程のほうがよっぽど重要だったっていうか。そういう意味で勝っても負けても過程の価値は変わらないみたいな』

「そうそうそう! さすがVtuberさん、配信してるだけあって言語化が上手い! これまで過ごしてきた日々の価値は変わらないし、そっちのほうが大事って気づけたことのほうが大きいみたいな。この子たちとの毎日が目いっぱい楽しかったからかな? みんなが成長していくのも嬉しかったし。あっちゃんも去年と比べて大人になったもんねー」

「うぅ……。ぶちょぉぉおお~!」


 あっちゃんと呼ばれた相模原女子の一人が小清水さんに抱きついて泣きじゃくっている。


『瑠依ちゃんも真知子ちゃんも去年はほんと子供だったのに大人になったよ~』


 ココ助先輩も琴崎先輩と南先輩を可愛がるように声を掛けるが、二人は照れ臭そうに「次の試合もあるから早く撤収しようよ」と帰りの準備を促した。


 次の対戦でこの部屋を使う他校の生徒が外で待っている。


――勝たなきゃ意味がないと思ってた……。


 正直、それは今でも思っている。負けるよりは勝ったほうがいい。それも一つの正解なのだと思う。


――「過程の価値は変わらない」……。


 ただ、ココ助先輩と小清水さんの言っていたこの言葉は、私の思う正解よりもずっと深いところにある気がした。


「私、相模原女子の分まで頑張りますから!」


 別れ際、宮本さんは相模原女子の面々にそう言った。「応援してる!」「頑張って!」という爽やかで温かいエールを受け取って、私たちは会場を後にする。次に来るのは一週間後の二回戦だ。


――羨ましい。


 素直にそう思った。

 ココ助先輩や小清水さんみたいに、勝ち負けだけじゃなく広い価値観で物事を見れる人になりたい。

 琴崎先輩や南先輩みたいに、ココ助先輩から大人になったねと言ってもらえるような、仲間から信頼される人になりたい。

 宮本さんみたいに、裏表なく誰とでも気持ちよく関われる素直な人になりたい。


 相模原女子のあっちゃんさんみたいに、先輩の胸に飛び込んで涙できる純粋な人になりたい。


――そしてみんなのように、このeスポーツを心から楽しめる人になりたい。


 勝ち負けがすべてだと思っていた。

 負けたらすべてが否定される気がした。

 相手を踏みにじって勝っても苦しかった。


 けれど、過ごしてきた過程に価値がある。

 勝ち負けでその価値は変わらないと言う人もいる。

 いつか私にもそう思える日がくるのだろうか。


 みんなと同じ場所に立てるよう、本気でeスポーツを頑張りたい。

 もっと本気で向き合いたい。

 そう思わせてくれる一回戦だった。

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