恋人は、どんな花よりも。
第24話
松方くんは、育美のことを、どう想っていますか?
育美は、
――4月。
私達に巡ってきた春もまだ青く、若かった。
教室の窓が入口となって吹き込む春の心地よい香りを胸いっぱいに吸い込む私、岬 梨句の目の前の席で、両目を矢印の形にした女の子――ううん、知る人ぞ知る『おっさん女子』がひとり「フェッ」とその口を開けた。
「出なかった」
「も~!か〜わいいなぁ育美は。可愛い」
ぐしぐしと鼻を擦って赤くし、「あ~…」とおっさんくさく唸る彼女に丸めたティッシュを押し付ける。
「あ"りがと」
頬杖をついて笑うと、小さくはにかみ返してくれる。
そうやって、ずっと、笑っていてほしいな。
「松方くんは」
そこまで言っただけで、育美の頬が桜色に染められた気がした。
「会ってる?」
「ぁ、ぅん…」
押さえたティッシュ越しの鼻声。下向きに若干泳ぐ視線。というか急に声ちっちゃ!
育美の小さな返事は、近くの席の子の声に紛れてしまった。
「松方の学校、体育祭ないらしい」
側で話題になっていた体育祭がこちらにも伝染った。え、と驚くと「『スポーツテストならあった気がします』だってさ」と育美のものまねが入る。
「松方くんってスポーツのイメージあった?」
「ない」
「だよね?」
「縦の動きが得意らしいよ」
「縦の動き」
育美は静かに頷いた。自分も納得がいかないという表情をして。
「走り幅跳び、高飛び、球技ならバスケ」
「なるほど!?」
ちょっと想像してみる。
あ、格好良い。
しみじみ結論を報告すると、「純粋だなぁ」と綻んだ笑顔が返ってきた。
松方くん。
こんな親友が見られるのはきっと、貴方のおかげです。
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