4
傍らで未だに眠る彼女を私は見つめていた。
首には赤黒い紐状の痣、長かった赤毛の髪は短く切り揃えられ、蒼白の顔はまるで屍人のようだと黒髪の男、アナン・シャドウは思う。
愛くるしい寝顔を手で撫でながら、その瞳が開くのをジッと待つ。
彼女が首を吊ったあの日、私は彼女の遺体を持ち去った。
「アナン、貴女は凄い魔術師ね?」
彼女の微笑む顔が忘れられなかった。
「貴方達の事をどうにかして誤解を解きたいのだけれど、なかなか上手くいかないものね……」
日に照らされて輝く赤毛が美しかった。
「でも、いつかきっと認めさせてみせるから!」
射貫く琥珀色の瞳が眩しかった。
「待っててね?アナン!」
差し出された手が温かかった。
嗚呼。
我が身を焦がす光よ。
この手が届かない太陽よ。
我が愛しのソレイユ・シャイン。
「別に、どーでもいいんだ」
彼女の唇を親指でなぞり、チラリと見えた赤い舌にうっそりと目を細める。
「あんな民衆【クズ】どもなんかに認められなくとも……」
輪郭をなぞり、彼女の唇に自身の唇を重ねた。
「君が、、君さえ居てくれるなら」
優しい口付けをし、舌を這わせれば。
「他に何もいらないよ」
眠り姫は静かに瞼を開く。
「おはよう……我が愛しの姫君」
彼女は私を見据えて告げた。
「貴方は……誰?」
その言葉に、私の唇は自然と吊り上がる。
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