第20話

松方はあたしに目を留めたまま、あたしが次に何と言うかを待っている。どうでもいいけどシャツ最後まで着ろよ。





「確かに。じゃあいっか」


「はい」




あたしは松方とは対格にある自分のロッカーを開けた。





なんか。



背後に感じる松方の気配と沈黙が、独特の空気をつくっている。






ロッカーに囲まれた中心にある長椅子に座ってロッカーを開けると、何かが僅かな音を立てて自分の指に当たった。



腰掛けた隣に目を向けると、眼鏡が椅子に置いてあった。





「あれ、これ松方の?」



「…はい?」




「眼鏡」


「ああ。そうです」




衣擦れの音が止まって、松方がチラ、とあたしの手の中に視線を送った。

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