第18話 祝、脱却!!

 草原を駆け回り、モンスターを次々と倒していった。


 ある時、コカラスグが何かを落とした。


「これはノートとシャーペンと替えの芯か?」


「いや、違うかもしれないでやんすよ!」


「じゃあ、なんだよ?」


「知らないでやんす! あはははははははははははははははっ!!!!!」


「うっとうしい酔っ払いだな!」


「んぴょー、んぴょーんぴょー」

「『とりあえず、解説を見よう』と言っているみたいデ~ス」


「そうだな。コメンタリーオープン」


 解説用のウィンドウが現れた。



 名称

 特製コッパーカッパーラビットスフィアグミ文房具セット。


 解説

 コッパーカッパーラビットスフィアグミ(通称、コカラスグ)のノーマルドロップ。


 食べられない。


 普通のノートとシャーペンと替えの芯のセット。


 ノートは30ページ。

 シャーペンには消しゴムが付いている。

 替えの芯は40本入り。


 普通のシャーペンなので、モンスターを攻撃すると壊れる可能性がある。

 やめておこう。



「コカラスグって、こんな名前だったのか。コッパーカッパーって、なんなのだろうか?」


「んぴょーんぴょーんぴょーんぴょー」

「『どっちも銅という意味だと思う』と言っているみたいデ~ス」


「とすると、こいつは銅銅ウサギ球体グミなのか? 訳が分からないな」


「面白すぎるでやんす! あははははははははははははははっ!!!!!」


「やかましい酔っ払いだなぁ」



「こいつもノーマルか」


「くっ、仕方ない、こうなったら踊るしかないでやんす!」


「なんでだよ!?」


「レアが出るおまじないでやんす!」


「うっとうしいからやめろ!」



「こいつは普通の文房具みたいだな。メモを取るのに使うとしようか」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


 アイテムボックストッキングに文房具セットを入れた。



「では、レベル上げを再開するか」


「んぴょー!」


「がんばってモンスターを酔わせるでやんす!!」


 その能力は自動発動だろ。


 何をがんばるのだろうか?


 まあ、どうでもいいか。



 また草原を駆け回り、モンスターを次々と倒していった。


 途中、脱水症状と思われる立ちくらみがして、やられたりもした。


 夜に戦おうとして、不意打ちをくらって、やられたりもした。


 そして……



 くらえ、パラスグラ!

 ナワデシバラソード一刀両断!!


 パラスグラを倒した。


「おっ、またおどろおどろしい効果音が聞こえてきたぞ」


 どうやらレベルが上がったようだ。

 これでレベル7だな。


「んぴょー!」

「レルも上がったみたいデ~ス!」


「わたしも上がったでやんす! だが、強くなったからといって、油断は禁物でやんす! 人間は案外脆くて、意外とあっさりやられてしまうものでやんす! だから……」


「はいはい、分かった分かった。もういいって」


 どうやらいまのサケニノさんは、説教をしたいタイプのようだ。



「むっ、シバル、何かが落ちているぞ」


「えっ?」


 パラスグラを倒した場所に、濃い緑色をした広葉のようなものが落ちていた。


 大きさは、成人男性の手くらい。

 よく見ると、葉の中央にウサギの顔のような模様がある。


「なんだこの葉っぱは? もしかして、薬草なのか?」


「いや、これは毒草でやんす! さっきのモンスターが、わたしたちを毒殺しようとしているに違いないでやんす! 実にけしからんでやんす! 往生際が悪すぎるでやんす! 実にけしからんでやんす! 説教してやるでやんす!!」


 サケニノさんがパラスグラを倒した場所に向かって、説教をし始めた。


 あれは放っておいて、解説を見るか。

 コメンタリーオープン。



 名称

 体に貼り付く幸運のウサギの葉。


 解説

 パープルラビットスフィアグミラビット(通称、パラスグラ)のレアドロップ。


 食べられない。


 アクセサリーの一種。


 名称通り、体に貼り付く葉。

 かぶれなどの健康被害は発生しない。

 剥がす時にケガしない。

 粘着力が落ちない。


 貼り付けても、防御力は上がらない。

 貼った場所によっては、変態力が上がるかもしれない。


 『幸運』の部分は名称通りではない。

 運は良くならない。


 貼り心地は良くも悪くもない。

 香りも良くも悪くもない。


 これを股間に貼ることが正装であった時代が、あったというウワサがあるようなないような感じらしい。


 とても壊れにくい。



「なんじゃこりゃぁっ!? こんなのがレアドロップなのかよっ!?」


「確かに納得いかねぇなッ」

「まったくだぜッ」


「こんなの何に使うんだよ!?」


「それは決まっているのではないか?」

「そうね。どう考えても、あそこに貼る一択よね」

「うむ、正装をするんだ、シバル」


「えええええええええええええええええええええっ!!!!!」



 体に貼り付く幸運のウサギの葉を、息子さんに貼った。


 正面からなら、息子さんは見えなくなった。


 書いてあった通り、貼り心地は良くも悪くもない。


「ついに全裸脱却だな! おめでとう、シバル!!」

「おめでとう、おめでとう!」

「おめでとう、シバル!」


「んぴょーっ!」

「おめでとうございマ~ス!」

「おめでとう、良かったわネ~!」

「おめでとうございマァス!」


「おめでとうございまッす!」

「おめでとうだぜッ!」

「おめでとうッ!」


「ありがとよ、みんな!!」


 全然まったく何ひとつとしてうれしくないけどなっ!!!


 くそったれがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!



「ああっ、キッコウ君が変態的な格好をしているでやんす! 説教しなきゃでやんす!!」


「うるせぇぞ、酔っ払い!!」

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