ダンジョンなどなど編

第16話 初めてのダンジョン探索

「そういえば、ホブラマグはどこに行ったんだ?」


「気が付いた時には、もういなかったぞ」


「そうなのか。死んだあと、すぐに生き返るわけではないのかな?」


「そうなんじゃないの?」



「おはようでやんす!」


「んぴょー」


「ああ、おはよう」


「ふははははははっ! それじゃあ、ダンジョンに行くでやんす!! 張り切って行くでやんすよ!!! あはははははははっ!!!!」


「あ、ああ……」


 テンション高いなぁ。

 まあ、いいか。



 ダンジョンに入った。


 すると、両開きの黒い扉があった。


「いきなり扉があるのか」


「そんなのどうでもいいじゃねぇかッ」

「開けてみようぜッ」


「賛成でやんす! あははははははっ!!」


「そうだな」



 扉を開けた。


 中は大きな円柱の内部のような部屋だった。


 壁や床は光沢のある銀色。


 天井はとてつもなく高い。

 しかも、所々白く光っていて、内部はとても明るい。


 正面、左右の壁に、両開きの黒い扉がある。


「ここがダンジョンか。妙な場所だなぁ」


 山中にある洞窟の中とは思えないな。


 異空間につながっているとかなのかな?


「はっ、そうか、そういうことでやんすね!」


「どうかしたのか?」


「ここの形を、よく見るでやんす!」


「それがどうしたんだ?」


「分からないでやんすか? ここは水筒の中でやんす!!」


「確かに、扉がなければ、そんな感じもするな」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「だから、ここのモンスターを倒せば、魔法の水筒が手に入るということでやんす!! 証明終了でやんす!! ふはーっはははははっ!!!」


「お前が酔っ払っておかしくなっていることが、証明されただけだな」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。



「ここには何もないようだし、移動するか」


「そうだなッ」


「さて、どこに行こうか?」


「あははははははっ! せっかくだから、わたしは黒い扉を選ぶでやんす!! ははははははっ!!!」


「全部黒いぞ、酔っ払い」


「んぴょーんぴょーんぴょー?」

「『左で良いんじゃない?』と言っているみたいデ~ス」


「じゃあ、それに決定な」



 扉を開けると、先程と同じような造りの部屋だった。


 前の部屋との違いは、正面と右に扉があることだけだ。


「また水筒の中のような部屋でやんすね! やはりここには魔法の水筒があるに違いないでやんす!! ふはーっはははははっ!!!」


「やかましいぞ、酔っ払い。ここにも何もないようだし、先に進もうか」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。



 正面の扉を開けると、先程とまったく同じ造りの部屋だった。


 もしかして、ここって似たような部屋が、いくつも並んでいる場所なのか?


「またまた水筒の中のような部屋でやんす! やはりここにあるんでやんすね!! はーっははははははっ!!!」


「それはもういいって」


「シバル、ここにも何もないようだぞ」

「次の部屋に行きましょう」


「ああ、そうだな」



 正面の扉を開けた。


「また同じ造りの部屋か」


「いや、違うぞ、シバル」

「左を見て」


「えっ?」


 部屋の隅に金色の宝箱がひとつ置いてあった。


「宝箱でやんす! 開けるしかねぇでやんす!! うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」


 サケニノさんが宝箱に向かって走って行った。


「おい、俺たちには意味ないだろ!?」


 ドロップアイテム以外入手できないんだぞ!?


「そんなの関係ねぇでやんす!! もらったでやんす!!!」


 サケニノさんが宝箱に向かって、ヘッドスライディングをした。


 サケニノさんが宝箱に触れそうになった時、いきなり宝箱が消えた。


 そして、サケニノさんは、そのまま地面に倒れ込んだ。



「えっ? えっ? 宝箱、どこ行っちゃったんでやんすか?」


「本当にどこに行ったんだろうな? これも縛りプレイのせいなのか?」


「その可能性もあるわね」


「んぴょーんぴょーんぴょー、んぴょーんぴょーんぴょー」

「『ダンジョンなのだから、わなの可能性もある』と言っているみたいデ~ス」


「なるほど、それもあり得るな」


 もしそうなら、わなを作ったヤツは、とんでもなく性格の悪いヤツだな。


「まあ、どちらにしろ、宝は入手できなかったということだな」


「うむ、そうだな」



「あああああああああああああああああああああああっ!!!!! なんで、なんでこんなことするんでやんすか!? された人の気持ちを考えたことあるんでやんすか!? 先生、怒らないから言ってみるでやんす!!」


 酔っ払いが虚空に向かって、説教を始めた。


 あれはもうダメかもしれないな。


「もう何もないみたいだし、先に進みましょうよ」


「ああ、そうしよう。おい、酔っ払い! 先に進むぞ!!」


「こんなことをしたら、悲しむ人がいるから、やっちゃダメでやんすよ!! 分かってるでやんすか!?」


「聞こえてないみたいデ~ス」


「仕方ない、無理やり連れて行くか」


「その方が良さそうネ~」



 正面の扉を開けると、部屋の中央に奇妙なものが浮いていた。


 直径1メートルくらい。

 全身水のようなもので作られている。

 豚の頭に似ている。


 このような姿の何かだ。


 他の部分は、先程の部屋とまったく同じだ。


「ようこそ、諸君ウサ~。我が名は『ロゴクケルワー』だウサ~」


 水豚頭が、そう言った。


 豚なのに、語尾が『ウサ~』なのか。


 まあ、今更だな。


「君はモンスターなのか?」


「いや、我が名は『ロゴクケルワー』だウサ~」


「えっ? モンスターじゃないのか?」


「我が名は『ロゴクケルワー』だと言っているだろウサ~。もしかして、お前はバカなのかウサ~?」


「ええ…… どういうことなんだよ?」


「そんなのどうでもいいじゃねぇかッ」

「重要なのは襲ってくるかどうかだぜッ」


「それもそうだな。それで、君は襲ってくるのか?」


「うむ、なぜかは知らんが、そうしなければいけない気がするウサ~」


「そうか」


 なら、こいつはモンスターだな。



「ゆくぞウサ~!」


 ロゴクケルワーがそう言い終えた直後、何かが向かって来た……

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