第14話 新たな仲間ができました

「うふふふふふっ、ついにわたしは念願の仲間を手に入れたでやんす! これでもう縛りプレイなんて怖くないでやんす!! あはははははははははっ!!!」


「さっきまで泣いていたのに、いきなり笑い出したぞ!?」


「これが『酒癖変化』の効果だぜッ」

「泣き上戸が笑い上戸になったみたいだなッ」

「めんどくさいだろッ?」

「悪いことは言わねぇッ。さっさと立ち去った方が良いぜッ」


「あ、ああ、そうだな。ナワデシバラさん、それで良いか?」


「んぴょー」


 ナワデシバラさんが首を縦に振った。


「それじゃあ、失礼するよ……」


「そうはさせないでやんす!!」


 サケニノさんがそう言って、俺に抱き着いてきた。


「逃がさんでやんす! お前たちは絶対に逃がさんでやんすよ!!」


「やめろっ! 離せっ!!」


「離して欲しいなら、わたしを仲間にするでやんす!!」


「遠慮しておきます!」


「強情なヤツでやんす! ならば、必殺の『ゼロ距離酒臭い息』をくらうでやんす!!」


「ぎゃあああああああああああああああああああっ!!!!!」


 結局、押し切られて、サケニノさんを連れて行くことになった。



「んぴょーんぴょーんぴょー、んぴょーんぴょーんぴょー」

「『仲間になったのなら、自己紹介が必要』と言っているみたいデェス」


「そうだな」


 俺たちは自己紹介をした。



「サケニノさんたちは、ゲームのクリア条件を知っているのか?」


「知らないでやんす」

「神は何も教えてくれなかったぜッ」


「そうか。俺たちと同じか」


 クリア条件は、なんなのだろうか?



「サケニノさんたちは、ここで何をしていたんだ?」


「水を飲みに来たでやんす」


「もしかして、下流の水を飲んで体調不良になったから、上流にあるであろう湧き水を飲みに来たのか?」


「せ、正解でやんす!? なぜ分かったんでやんすか!? ま、まさかキッコウ君は心が読める特殊能力者でやんすか!? 乙女の秘密が丸裸キッコウ君状態にされるでやんすか!? 恥ずかしすぎるでやんす!!」


「落ち着け、酔っ払い! 俺たちも同じことをしていただけだっての!!」


「なんだ、そういうことだったでやんすか。安心したでやんす」



「んぴょーんぴょーんぴょー」

「『そろそろ出発しよう』と言っているみたいデ~ス」


「そうだな」


「では、湧き水目指して、出発でやんす!」



 山の中を歩いている。


 まだ目的地には着かなさそうだし、雑談でもしようかな。


「サケニノさんは、ドロップアイテムを入手できたか?」


「まだひとつも入手できてないでやんす。何匹も倒したのに、ケチすぎるでやんす」


「そうか。そこも俺たちと同じか」


 もしかして、ドロップ率は低いのか?



「サケニノさんは、どうやってモンスターを倒したんだ?」


「『アルコールシェア』で酔ったモンスターを、蹴って倒したでやんす」


「そうだったのか」


 意外と強力な能力なんだな。



 湧き水を発見した。


 岩から水がしみ出ている。

 周囲は自然豊かで、とても美しい。


 風光明媚ふうこうめいびとは、こういう景色のことなのだろうか?


「とってもキレイで美味しそうな湧き水でやんす! さっそく飲むでやんす!!」


「ああ、そうしよう」


 体調不良になりませんように!!



 おっと、その前にニオイを嗅いでみるか。


 変な臭いはしないな。


 これなら大丈夫か?



 俺たちは湧き水を飲んでみた。


「おおっ、冷たくて美味しいな!」


「んぴょー!」


「うまいでやんす! 運動のあとの冷たい水は最高でやんすね!」


「まったくだな!」



「んぴょーんぴょーんぴょー」

「『ステータスを見てみよう』と言っているみたいデ~ス」


「ああ、そうだな。ステータスオープン」


 さて、健康度は……


「ぎゃああああああああああああああああああっ!? また健康度がどんどん下がってるうえに『危険物が体内に侵入』って、書いてある!?」


「んぴょーっ!? んぴょーっ!?」

「レルのにも書いてありマァス!」


「わたしのところにも書いてあるでやんすよ!?」


 結論、この川の水は飲めない!



「シバル、どうするんだ?」

「またモンスターに倒されるの?」


「ああ、それしかないだろ」


「んぴょーんぴょーんぴょー」

「『私もそう思う』と言っているみたいヨ~」


「うう、仕方ないでやんす。わたしもそうするでやんす」


「それじゃあ、モンスターを探しに行くか」



「あっ、合流場所を決めておかないとでやんす!」


「ああ、そうだな」


 生き返る場所が、みんな違うからな。


「じゃあ、この山の麓のあの川の近くでどうだ?」


「了解でやんす!」



「おおーいっ、モンスターっ! 出て来ぉいっ!!」


「むむっ、変なニンゲン発見ウサッ!」


 富士山の模型のようなヤツが現れた。


 大きさはバスケットボールを、ひと回り大きくしたくらいだ。


「初めて見るヤツだな。君はモンスターなのか?」


「ニンゲンはそう呼んでいると聞いたことがあるウサッ」


「えっ? 誰から聞いたんだ?」


「仲間からだウサッ」


「そうなのか」


 仲間とコミュニケーションを取っているんだ。



「他の呼び名はないのか?」


「他のウサッ? そういえば『ホブラマグ』と呼ばれることもあるって、聞いたことがあるウサッ」


「そうなんだ」


 それがこいつの種族名なのか。



「なんで語尾に『ウサッ』を付けるんだ?」


「知らんウサッ。なんか言っちゃうウサッ」


「そうか」


 訳が分からないな。


 これも神の仕業なのだろうか?



「それじゃあ、死んでもらうウサッ!」


 ホブラマグが山頂の部分を俺に向けて、跳びかかって来た。


 腹部に衝撃が走る。


 周囲の景色が急激に動き出し、背部に激しい痛みを感じた……

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