第32話
とりあえず吉田さんに色々とお膳立てをしてもらった俺は、明日花の待つ駅前のカフェとやらに向かうことにした。
肝心のカフェの名前を聞き忘れていたことに道中で気づいた俺だったが、商業施設の一階にあるガラス張りのカフェによく高校生がたむろしてることを知っていたのでとりあえずそこに向かってみる。
幸いなことに俺の予想は当たっていたようで、喫茶店の前で『まだかなぁ……まだ来ないかなぁ』みたいな顔で少しそわそわしたようすの明日花を見つけた。
いつもならば『おうっ!! 明日花っ!!』なんて気軽に声をかけるところだけれど、どうも勇気が出ずそれとなく近づいた……のだが。
「はわわっ……」
俺が近寄る前に明日花にバレてしまい、彼女は目を見開いたかと思うと俺から顔を背けて気づいてない感を出してきた。
いや、さすがに無理があるだろ……。
「おい、明日花」
なんて声をかけてみるが彼女は俺から顔を背けたままである。
「おい、聞いてんのか?」
再度声をかけるとそこでようやく彼女はしぶしぶこちらに顔を向けた。
「な、なんだ……祐太郎と待ち合わせをした覚えはないぞ……」
「俺もお前と待ち合わせた覚えはないしな」
「だったら早くどこかに行ってくれ……」
「まあなんだ。お前に言づてがある」
「言づて? なんだよ……」
「吉田が先生に文化祭のことで呼び出されて来れなくなったって」
とりあえずそれっぽい言い訳を適当に考えてみた。
すると明日花は何やら冷たい目を俺に向けてきやがる。
「吉田は文化祭のことで呼び出されたのにどうして祐太郎はフリーなんだよ……」
しまった……。そういえば俺も文化祭の実行委員だった……。
凡ミスをしてしまったことに今更気がついたが、もう口にしたことを撤回するわけにもいかないので。
「俺はなんというかその……戦力に数えられていないから」
という言い訳をしておく。
「確かに……納得した」
納得されるのも悲しい話ではあるが、とりあえず信じて貰えたことを喜ぼう。
が、納得はしたものの明日花は何やら冷たい視線を送ってくる。
「吉田のことはわかった。で、どうして祐太郎はここから立ち去らないんだ」
「吉田との予定がなくなったってことはお前フリーだろ?」
「だったらなんだ」
「暇だったら遊ぼうぜっ」
軽快に明日花を誘ってみるも彼女の表情は変わらない。
「いやだ」
「なんでだよ。暇なんだろ」
「言っただろ……そういうのは先輩を勘違いさせかねないからやめるって」
「俺が吉田に告白するってときにお前もずっと俺のそばにいたよな」
「そ、それはその……違う」
「なにが違うんだよ」
と、吉田が俺に言ったことの受け売りで明日花を責めてみると、彼女は少し困ったように頬を赤らめさせる。
さすが吉田の言葉は強い。
「と、とにかく今はそういうのは良くない……」
「先輩に見られなければ勘違いもされないだろ? だったら明日花の家か俺の家でゲームでもしよう」
とりあえず今は何を言っても意固地になりそうなので、俺は明日花の手を取ると強引に家に向かって歩き出した。
「お、おいっ!! 祐太郎っ!!」
「レッツゴーだ」
※ ※ ※
ということで半ば強引に明日花を連れて住宅街へと歩いて行くことにした。
最初の方は「せ、先輩に見られるかもしれない……」と困惑していた明日花だったが、途中から諦めたようで大人しくなった。
結局、明日花の家へと向かうこととなった俺たちは手を繋いだままなのも忘れて彼女の家に入ったのだが。
「あら、手なんか繋いで仲良しね」
玄関で友理奈さんと鉢合わせたときに俺と明日花はそのことを思い出した。
「わっ!? はわわっ>< わっ!! わわっ!!」
と、明日花は変な声を連発してから顔を真っ赤にして俺から手を離す。
「お、お姉ちゃん、これは違うぞっ!!」
「違うって何が違うの?」
「とにかく違うぞっ!!」
とにかく違うことを必死に訴える明日花だったが、そんな明日花を友理奈さんは微笑ましそうに眺めていた。
「まあ、仲が良いことには違わないんじゃない?」
「別に仲がいいとかそういうことじゃ……」
「あら、倦怠期なの?」
「別に倦怠期とかじゃないぞ」
「まあ手繋いでたもんね」
「これは違う」
「倦怠期なの?」
だめだ。無限ループに入っている。とにかく明日花は自分をからかう友理奈さんが気に入らないようで不機嫌そうな目をしている。
結局、友理奈さんは「何はともあれ仲よさそうで良かったわ」なんて言いながらどこかに出かけてしまった。
ということで不機嫌気味の明日花と俺が取り残されてしまった。
とりあえず鼻息を荒くしながらムカムカしている明日花を落ち着かせる。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫じゃないっ!!」
「そ、そっか……」
とりあえず明日花の背中をさすってやると明日花は「祐太郎っ!!」と俺を見やった。
「なんだよ……」
「ムカムカするから甘い物を食うっ!! 祐太郎もついてこい」
ということで明日花とともにリビングへと向かうと、棚から「昨日お母さんが旅行のお土産でもらってきた」らしいぼた餅を取り出すとさらに三つほど乗せて美味しそうに食べていた。
俺もおこぼれを一つもらった。
これぞ棚から……いや、なんでもない……。
結局、明日花は三つ目のぼた餅を食べ終える頃にはすっかり機嫌を取り戻したようで「美味しい」と満面の笑みを浮かべていた。
――――――
新作の準備中のため隔日更新になっとります……すんません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます