失恋した俺を隣で励ましてくれる幼馴染には好きな人がいるらしい

あきらあかつき@10/1『悪役貴族の最強

第1話

「ごめんなさい……鎌田かまたくんはとても優しいし一緒にお話ししてて楽しい人だけど……ごめんなさい……」


 とある平日の校舎裏。


 俺、鎌田祐太郎かまたゆうたろうは半年間片思いを続けていた吉田沙月よしださつきに告白をしてフラれた。


 ベタに頭を下げて右手を差し出していた俺だったが、彼女はそんな俺にそう答えてしばらく立ち尽くす。


 が、俺が頭を上げると「期待に応えられなくてごめんね」と彼女は全く悪くないはずなのにぺこぺこと俺に頭を下げる。


「い、いや、吉田が謝ることじゃないよ」

「そ、そうだけど……」


 そう。俺が勝手に吉田に好意を寄せて、それでいて勝手に付き合えると思って、勝手に告白をしたのだ。


 こんな気まずい空気を作ってしまって俺の方が申し訳ない気持ちだ。


「か、鎌田くん……」

「ど、どうした?」

「わ、私、これからちょっと用事があるから行くね?」

「え? う、うん。予定があるのに俺なんかに付き合ってくれてありがとう」

「じゃあまた学校でね」


 そう言って吉田は俺を横切るとやや早歩きで校門の方へと歩いて行った。


 これで俺の小さな恋は芽生えることなく終わった。


 ま、まあしょうがない。辛いけれど恋愛は相手があってのことなのだ。相手が自分に好意がなければどうしようもない。


 なんて必死に自分に言い聞かせては見るものの、やっぱり堪えるな……。


 同じクラスで当たり前だけど明日になればまた教室で会うのだ。完全に自業自得なのだけれど、明日からはこれまでのように自然に吉田と会話ができなくなると思うと悲しい気持ちになる。


「はぁ……」


 と現実を受け止めつつも思わずため息を吐いてしまった俺は、帰宅するために踵を返して校門の方へと歩き出そうとした……のだが。


「お、おいっ!! 祐太郎っ!!」


 と、そこでそんな声が聞こえてきたので慌てて足を止めて辺りを見回した。


 すると校舎裏の花壇の後ろからひょっこりと顔を出す美少女の顔が見えた。


明日花あすかっ!? な、なんでお前がここに……ってかもしかして盗み聞きしてたのか?」

「え? あぁ……それは……祐太郎が上手く告白できるか心配だったから……」

「だからって盗み聞きまでしなくても……」


 困惑する俺だが、彼女は俺の顔を見つめたまま手招きをしてくるのでとりあえず彼女の方へと歩いて行く。


 すると彼女もまた花壇からこちらへと歩み寄ってきた。


 三宅明日花みやけあすか。それが彼女の名前である。


 身長は俺よりも少し低いが、女子生徒の中ではかなり背の高い方で、ショートボブに均整のとれた顔立ち、さらにはスタイルも抜群の客観的に見ればかなりの美人さんだ。


 そして、俺と彼女は有り体な言い方をすれば幼なじみである。


 もともと家が近かった俺と明日花は幼稚園で出会い、小学校、中学校、高校と同じ学校に通っている筋金入りだ。


 正直なところ、高校は別々になる予定だったのだが、あろうことか明日花が私立の受験当日に風邪を引いたせいで併願の俺と同じ公立高校に通うことになった。


 とまあそんなこんなで幼い頃からずっと一緒にいる明日花だが、彼女は俺が吉田に告白すると聞いていてもたってもいられなかったようだ。


「お、おい祐太郎……大丈夫か? 落ち込みすぎてないか?」


 なんて顔を覗き込んでくる明日花。


 どうやらかなり心配してくれているようだ。


 実は吉田のことを好きになって以来、明日花は積極的に俺のことをサポートしてくれていた。


 教室では吉田にどういう話題をふれば良いのか、一緒に下校するためにはどう声をかければいいのか等々、女の子目線で俺にアドバイスを送ってくれていたおかげでかなり役にたった。


 まあその結果がこの様なんだけどな……。


 もうこれは俺に魅力がなかった以上に理由がない。


 どうやら彼女は俺がかなり落ち込んでいると見ているようで、俺の背中を右手で摩ってくれる。


 やっぱり持つべきものは友である。


 彼女の優しさを嬉しく思いつつも、あまり明日花の気を遣わせすぎるのもよくないと思い直す。


 だからやや強引に笑顔を浮かべると、俺の顔を見た明日花はわずかに引きつった笑みを浮かべた。


「ゆ、祐太郎の笑顔……ちょっと怖いぞ……。けど私を安心させようとする努力だけは感じる……」

「そう思うんだったら怖いとか言わないでくれ」


 と、そこで明日花は何がおかしかったのか吹き出した。


「はははっ!! それもそうだな。そんなことよりも祐太郎。反省会はどこでやる?」

「反省会? なんだよそれ」

「決まってるじゃねえか。祐太郎の恋愛反省会だ。反省するべきことは反省して次につなげるんだ」

「できれば部屋で静かに反省をしたいんだけど」

「そんな辛気くさいことを言うな。そうだな。反省会はとりあえずいつも通り駅前の『神香しんか』でラーメンを食って私の家でゲームでもしながらしよう」

「いや、それいつもと同じじゃねえかよ」

「細かいことはいいんだよ。さあさあ祐太郎、そうと決まればさっさと行くぞっ!!」


 そう言うと彼女は地面に置いていた鞄を持ち上げて丈の短い制服スカートを揺らしながら軽やかなステップで校門へと歩いて行くのであった。


「おい、置いてくぞっ!!」


 と振り返って笑顔を向ける彼女を見ながら俺は思うのであった。


 なんだかんだでホントこいつって良い奴だなって。


――――――

今回は不器用だけど可愛くて良い子感溢れるヒロインを全力で書いていきます!!


面白いと思った方はフォロー&レビューをいただけるとますます頑張りますっ!!

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