リシよ、舎利弗よ

 神は今際にて想う。追憶は彼方から来て、遠雷や船の汽笛によって祝福されながら、その視野が見張る景色に果てた水夫が体現する愛を、その愛を、まさしく愛を、神は捨てなければならなかったのだ。だが、後悔はないからと、数字が定めるリタよりは高く飛んでいける。故に天使らは、休めていた柔らかく和らぐ火の迸るその翼を開き、刻に合わせて神の前に集いしは永遠の終わりを見届けるために一人の少年を導く。

 永遠も終わりが来る。神よ、と少年は泣いていた。嗚呼、なぜあなたは一人ぼっちで泣いていたのですか。世界に、あなたに、私たちに、愛を求めて、見返りを求めてる愛すらも、満たされなくて泣く泣く去る日には、枯れ葉のように散っていく輪廻なのですね。それさえもっと正しくすれば、ですが……。

 忘我だとしても、揺るがない意志によって少年は至るけれど、私はもう疲れた。水面の顔は、ただ冴えわたる脳と、穏やかな死に縁して、美しくも病的に白く、晴れやかな冬の日の空をも映し出す瞳からは仏の涙が流れていた。

「やめないで、やまないで」

 もう、僕は……。ああ、母さん! 願い叶うなら、もう一度子宮の中へ帰りたいのに。拝啓、いつかは死ぬけれど、もう叶わなくていいから。満たされなくてもいい。僕が僕のままで、僕を救わなくちゃならないんだ!

 泣いたのは終末日のこと。それは神の詩がシによって死を迎えしリシの定め。

 久遠より水は罪であった。穢れを清ますには、代償の血が必要だった。

 夢幻さえも、この苦しみをどう昇華しよう。

 ならばと、私は世界を創りしあなた達へこの賛歌を送ります。

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