第9話

「リナ、具合はどう?」


『エミリオ、うんだいぶいいと思う。


でもご飯作れそうにない。ごめん』



部屋から出てこない私の様子を見に来てくれたエミリオへ体調が悪いと伝えた。




「あぁ、カオリと食事はすませたよ。お弁当は大丈夫だから。カオリは商会に連れて行く。だからゆっくり休むといいよ。行ってくる」



『いってらっしゃい…』


扉に向かって声をかける



ごめんね…


「お母さんは体調悪いから、お父さんと一緒にお仕事行こうかカオリ。

静かにね」



「お母さんいってきまーす」



ごめんね…


2人がいなくなると静けさが戻ってきた


どこも具合は悪くないのだけれど、


精神面への打撃がすごくて。


過去を振り返らずに前へ進もうとしていたのに、気持ちは否応なく過去へと引き戻される。


 

久しぶりに一人きりの時間。


カオリもそろそろ学園へ通わせてもいい年頃になった。


そろそろ仕事を探しめようかな。


子離れする時期なのかもしれない。


働き始めたら、余計なことなど考えることもなくなる。


これからの身の振り方について、モヤモヤと考えていると、扉の開く音が聞こえた。



室内の時計へと目を向けると、お昼を少し過ぎた頃だった。



エミリオが帰宅するのは夕方のはずだ。


侵入者?


重い身体を起こして息を殺しながら、扉を少し開けて様子を窺う


「お母さんまだ寝てるみたい」


「カオリ、お父さん疲れたから一人で遊んでね」


「あっちで本よんでるね」



どうやらエミリオ達のようだ。


ほっと安堵する。それにしても今日は早いのね。


廊下を歩くエミリオを呼び止める。


「おかえりなさい。早かったのね。」


「あぁ」


急に声をかけられたのに驚いた様子のエミリオ。

なんだか様子がおかしい。


「エミリオ?」


エミリオは私と目を合わすことなく寝室へ入る。



その態度に胸騒ぎがした。



私は扉を閉めるとエミリオの様子を窺った。



エミリオは窓辺に佇み、私に背をむけたまま口を開く。



「しばらく仕事を休むように言われた。」



「どうして?」


「どうしてって?


今日リチャード様に呼び出された。」



リチャード様はロッキー商会の経営者だ。

一代で商会を築き上げたやり手だと聞いている。


そんな上の方にどうしてエミリオが…?



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