第13話 封印を狙う影
探偵事務所の設立が正式に許可され、アレンとリナはその準備を進める日々を送っていた。学園内の他の生徒たちも、二人が封印の守護者として認められ、探偵事務所を開設することを知り、興味と期待を寄せていた。
「探偵事務所、いいなあ。アレンとリナが本当に学園の謎を解いてくれるのか」
「いつか私も事件の解決に協力したい!」
生徒たちの声が廊下で交わされる中、アレンは少し照れくさそうに微笑んだ。彼が封印の守護者として選ばれた理由を生徒たちは知らないが、それでも彼の中で、使命感と共にわずかな自信が芽生えていた。
「アレン、私たちの探偵事務所、学園のためにも頑張ろうね」
リナもまた、自分たちが学園の平和を守るための役割を果たすことに、強い意欲を持っていた。二人は探偵事務所の設立に向け、必要な書類や物資を揃え、学園内の小さな空間に事務所を構える準備を整えていた。
ある夜、アレンは一人で事務所の整理をしていた。リナは他の準備のため、一時的に席を外していたため、事務所内は静寂に包まれていた。
「これで、必要な道具も揃ったし、あとは少しずつ事務所の形を整えていけば…」
アレンが小声で独り言を呟いたその時、ふと背後に冷たい空気が流れ込んできた。反射的に振り返ると、暗闇の中に不気味な影が揺らめいていた。
「…誰だ?」
アレンが警戒心を強め、魔力を感じ取ろうとすると、その影はゆっくりと動き出し、闇の中から男の姿が現れた。黒いローブを纏い、顔を隠すようにフードを深くかぶっている。だが、その鋭い眼差しがアレンを捉えて離さない。
「封印の守護者…なるほど、お前が選ばれたというわけか」
低く響く声に、アレンは身構えた。その男はまるで全てを見透かしているかのように、アレンに視線を向けていた。
「君は…誰なんだ?なぜここにいる?」
アレンが問いかけると、男は薄く笑みを浮かべ、静かに言葉を返した。「私は、封印の力を求める者。そしてその力を解き放つことができる者を探している」
その言葉にアレンは驚愕した。封印の力を狙う者がすぐそこにいるという事実が、彼の心に冷たい恐怖を刻み込んだ。
「まさか、封印の力を悪用しようとしているのか…」
アレンが呟くと、男は冷ややかな笑みを浮かべた。「悪用…?それはどうかな。お前たちが封印を守ることで、むしろ異世界は不完全な形で安定を保っているだけだ。私は真の安定をもたらすため、その力を手に入れる必要がある」
男の言葉には不気味な説得力があり、アレンはその意図を掴みかねていた。しかし、封印の力を解き放つことで、異世界全体に混乱がもたらされることは明らかだった。
「その力は、君の手に渡るべきものじゃない」
アレンが毅然とした口調で言い放つと、男は嘲笑するように首を振った。「ならば、お前が私を止めるとでも言うのか?」
その瞬間、男は手を掲げ、黒い魔力がその掌から湧き上がった。冷たい風が吹き抜け、部屋の空気が一瞬で凍りつく。アレンは自分の無色の魔力を感じ取り、咄嗟に防御の姿勢を取った。
「君に、この封印の力は絶対に渡さない!」
アレンは自分の中で湧き上がる魔力を感じながら、男に対して強い決意を示した。しかし、その時、男の目が冷たい光を帯び、彼に語りかけるように低い声で囁いた。
「お前の無色の魔力…それがどれほどの力を持つのか、試してやろう」
男が放った黒い魔力がアレンに向かって襲いかかり、その衝撃が空気を切り裂いていく。アレンは必死に防御の魔法を展開し、黒い魔力を受け止めようとしたが、その力の強さに圧倒されそうになる。
「くっ…!」
アレンが必死に踏ん張っていると、その場にリナが駆け込んできた。彼女は状況を察し、すぐにアレンの隣に立ち、精神系の魔法で男の攻撃を阻止しようとした。
「アレン、大丈夫?私も一緒に戦うよ!」
リナがアレンに力強い声をかけ、二人で魔力を合わせて防御を固めた。男は冷ややかな笑みを浮かべ、二人の様子を見ながら一瞬の沈黙を挟んだ。
「二人がかりか…まあ、いいだろう。今日はお前たちの力を見極めただけだ。だが、封印の力を求める者は決して私一人ではない。覚えておけ…封印を守る限り、お前たちに平穏は訪れない」
そう言い残すと、男は黒い霧と共に姿を消した。二人は息を整え、部屋に漂う不穏な空気を感じながらも、再び静寂が訪れるのを見守っていた。
「アレン…封印を狙う者が、こんなに近くにいるなんて」
リナが不安そうに呟くと、アレンも同じように感じていた。封印を守るための探偵事務所を設立する意義が、今まさに目の前で確信に変わりつつあった。
「この学園だけでなく、異世界全体を巻き込む危険が迫っているんだね。僕たちで守らなきゃ」
アレンは冷静な表情でリナに向き直り、決意を新たにした。その視線には、ただの学生だった頃とは違う強い覚悟が宿っていた。
「そうだね、アレン。私たちが探偵事務所を通じて、この世界の平和を守るんだ」
リナもまた、強い意志で彼に応えた。二人は封印を守る守護者として、そして探偵事務所を開設する者として、今後も異世界での試練に立ち向かっていく覚悟を固めた。
翌日、二人は学園長に昨夜の出来事を報告し、封印を狙う者たちの脅威が現実のものであることを伝えた。学園長は二人の話に耳を傾けながら、深く頷いた。
「封印を狙う者たちが学園内にまで侵入している以上、君たちの探偵事務所の活動がますます重要になるだろう。外部の脅威にも対応し、封印を守るために尽力してほしい」
学園長の言葉に、アレンとリナは力強く頷いた。学園の平和を守り、封印の力を狙う者たちに立ち向かうため、彼らは探偵事務所としての本格的な活動を始める準備を整えた。
「封印を狙う者たちは決して油断できない存在だ。これからは、学園の中だけでなく、学園外からの情報も集める必要がある」
アレンがリナに向かって言うと、彼女もその必要性を感じていた。探偵事務所の設立に伴い、彼らは学園内外での協力者を求め、情報網を広げていく計画を立て始めた。
「私たち二人だけで守るのは難しいかもしれないけど、信頼できる仲間を増やしていこう」
リナの言葉には希望が込められていた。アレンもそれに応じ、彼らがこれから築く探偵事務所が学園の守護だけでなく、異世界全体の安定に貢献する拠点になることを夢見た。
こうして、アレンとリナは封印を守る決意と共に、探偵事務所の活動を本格的に開始する準備を進めていった。封印を狙う者たちとの対決は始まったばかりだったが、二人の心には揺るぎない信念が芽生えていた。
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