ザインの刻限

 鳳凰の火を纏う金色夜叉は、冴えない。いつか見た空のような瞳も、冴えない。朱雀を彷彿とさせる長髪も、狐のような瞳さえ。だけど、彼女の唇は甘かった。世界中の時が止まるくらいには。


 さぁ、次の時空へと

 さらば、今生よ


 寝返りをうち、目覚める頃には、夜明けだった。賢しいな。やはり、刻限は今も止まないのか、と。それさえ危うさを内包するというのなら、死して留める、ザインの意味を。


 晴れた晴れた、全能の晴れ

 雨だ雨だ、全知の雨だ

 雪だ雪だ、無能の雪だ


 だから、どうした。季節は廻る……

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